
この映画は1965年から1966年にかけてサイゴンにあるアる(Armed Forces Vietnam Network 、ベトナム米軍放送網)に新しいディスクジョッキーが赴任した来ました。彼は朝6時からの番組で「 Good Morning, Vietnam」のかけ声と共に、ギャグやジョーク、皮肉にあふれたトークと共に軍で禁止されていた、軽快なロックンロールを流し、厳格な上官達から反発を受けることになります。しかし、当時のアメリカ軍はベトナムへの戦力拡大の最中だったため、10代後半から20代前半の徴兵されてきた兵士たちから、熱狂的な支持を受けました。
この映画は実際にサイゴンで活躍したディスクジョッキー、エイドリアン・クロンナウアー(アイキャッチ画像の人、写真は1999年のもの)の実話をもとにして作られました。
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亀仙人2映画 『グッドモーニング ベトナム』
1987年 アメリカ
監督
バリー・レビンソン
著者
ミッチ・マーコウィッツ
ストーリー
エイドリアン・クロナウアー
制作
ラリー・ブレズナー
マーク・ジョンソン
主演
ロビン・ウィリアムズ
フォレスト・ウィテカー
撮影
ピーター・ソヴァ
編集者
スチュ・リンダー
音楽
アレックス・ノース
配役
ロビン・ウィリアムズ (二等空軍兵役エイドリアン・クロンナウア)
フォレスト・ウィテカー (エドワード・ガーリック二等兵)
ファン・ドゥク・トー (ツアン役のトゥン・タン・トラン)
チンタラ・スカパタナ( トリン)
ブルーノ・カービー (スティーヴン・ホーク中尉)
ロバート・ウール (マーティ・リー・ドライウィッツ曹長)
JTウォルシュ (フィリップ・ディッカーソン曹長)
ノーブル・ウィリンガム (テイラー将軍)
リチャード・エドソン(アバーソルド二等兵)
リチャード・ポートナウ (レヴィタン)
フロイド・ヴィヴィーノ(エディ・カーク)
ジュニー・スミス (フィル・マクファーソン)
ク・バ・グエン (ジミー・ウォー)
解説とあらすじ
1965年の夏、サイゴンにある米軍の現地放送局「AFVN」に破天荒なアナウンサー、エイドリアン・クロンナウアがやってきました。それはこの基地の司令官テイラー将軍がクレタ島に居たとき、彼の放送を聞いて笑いこけたことが原因でした。サイゴンにある放送局の指揮官は、かって精鋭部隊を率いたこともある歴戦の勇士ドライウィッツ曹長で、規律を重んじる生真面目で融通の利かない男でした。
そのためサイゴンのラジオ局は真面目一方で、若い兵士達にとっては面白味のない放送だけを流していました。テイラー将軍は、この放送局に新風を入れようとしたのです。
ではどのように放送したか、映画で出てきたデビュー初日の放送内容を日本語字幕を参考に解説してみます。
番組は最初に『Goo-o-o-o-d モーニングベトナム』、との絶叫から始まります。朝6時からの放送なので、聞いている人はこれで度肝を抜かれ、いっぺんに目が覚めるはずです。
『テスト放送と違うよ。ロックン・ロール だよ!! プレスリー映画の世界さ』
エルヴィス・プレスリーはロックン・ロール黎明期に出現した歌手、俳優で、史上最も売れた歌手で42歳で死ぬまでに、世界でのレコード、カセット、CDの総売上は五億枚以上とされています。
エルヴィス・プレスリーについて、もっと知りたい人は、こちらの映画が最適です ↓
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YouTubeの予告編です。↓
『”ラスベガス万歳 “か “ダナン万歳 “か、ビバ、ダナン(ダナン万歳)!
私をダナンして、
優しくダマして
朝から じゃかーしい ?
止まんねェ』
“ラスベガス万歳(Viva Las Vegas)”はエルヴィスの曲です。↓
・・・・・・・・・・・・
この位までは良いのですが、話がだんだん下品になってきます。
・・・・・・・・・・・・
♫ ”トワイライ・トゾーン “のテーマ曲 ♫
『今 男は時空を超え
旅に出る そこはー
トワイライト・ゾーンの先の
非武装ゾーンDMZ ! 』
『DNZって何ね?
米の警察行為とは』
DMZとは、北ベトナムと南ベトナムを分ける非武装中立地帯です。北緯17度線に沿って流れるベンハイ川の両脇2㎞の範囲に設けられました。
出典 ウィキペディア
警察行為とは、正式な宣戦布告なしに行われる軍事行動です。アメリカはは南ベトナムの共産化を防ぐために、治安活動の一環として南ベトナムに軍隊を派遣しました。
『警官がイイ女に目をつける
つまり カプチーノ飲むより
目がランラン』
『非武装区の起源は
“オズの魔法使い”だぜ
ダメ 行っちゃダメ
あれれのホーチミン
サイゴンに着いたのよ
小さな人ばかり
南の兵隊ARVNです わたし』
「オズの魔法使い」の主人公、少女のドロシーは家ごと竜巻に巻き込まれて愛犬のトトと共に魔法の国オズにあるマンチキンの町に、やって来ました。
ドロシーは家がサイクロン(竜巻)に巻き込まれる中、トトの耳をつかみます。この話は後でクロンナウアーのジョークに出てきます。
出典 Wikipedia
ドロシーが着いたマンチキンの住民は小人で、兵隊達は緑色の制服を着ています。「ARVN」は南ベトナムの政府軍「ベトナム共和国陸軍( Army of the Republic of Vietnam)」で深緑色の制服を着ています。ベトナム人はアメリカ人に比べて背が低いため、小人になぞられてここに出てきました。
『ホーチミン・ルートを進め !
逃げるなドロシー
あれは北の魔女か
はたまたハノイ・ハンナ !
ちびGIめ ちび犬トトめ 』
「北の魔女」はオズの国で、ドロシーを助ける美人の魔女グリンダのこと。
ハノイ・ハンナは、ハノイ放送で1日3回ベトナムに派遣された米兵に向かって、英語で宣伝放送(プロパガンダ)を行っていた女性アナウンサーです。
ハノイ・ハンナ 1966年
出典 ウィキペディア
1967年6月17日放送の一部
GIジョーのみんな、ご機嫌いかが?あなたたちのほとんどが、何の説明も受けないまま、このロクでもない戦争に連れて来られたんじゃないかしら。訳のわからないまま戦争に行くように命じられて、ここで命を落としたり、大怪我を負って一生を台無しにするのって、意味が無いじゃない。
引用 ウィキペディア
「ちびGIめ ちび犬トトめ」要するに、小さいのは嫌いということ。ここから話は下ネタに移ります。
『エイドリアン(一般的な男の人の名前)?、何なさっているの?
“巨艦をしゃぶれるのか、ハンナ”』
ここで話を聞いていた仲間のアナウンサー達は、吹き出してしまいます。
『おたく誰ね。
“ルーズベルト・ルーズベルト”
駐屯地は?
“黒マン・デルタ(女の人のあそこ)”
そちらの天気は?
“暑くて燃えそ
ブリーフ鍋で
金タマ汁が出来ちゃう”』
ここで言うブリーフ鍋とはこれのこと ↓
名前はクロッチポットといいます。使い方は写真を拡大してイラストを見てもらえば分かると思いますが、フリーズドライの食品を水と混ぜて金〇〇の前にぶら下げておけば、料理が出来るというものです。
冗談みたいな品物ですが、日本でも売っているところがあるので、通販で買えるそうです。
『それで?
“暑いの
太陽の使者か ?
こっちじゃ 坊主も
火だるまだ(僧呂の焼身自殺のこと)
クソ暑いの”
夜はどう?
“暑くてヌレヌレ
ズブズブはまっちゃう”』
これだけの量を、わずか3分ちょっとで話すマシンガン・トークも特徴です。
曲を流している間には
『北ベトナムでは、カーネル・サンダース(ケンタッキーフライドチキンのおじさん)の代わりに、ホーチミンの像がいっぱい建っている』
ジョンソン大統領の娘、リンダ・バード・ジョンソン・ロッブに対して
『バードでよかったね。もしドックだったら耳をつまんでぶら下げなければならない。』
『我々はベトコンを発見することが出来ないことを、発見した。
“でもそれらしい人を見つけたら、どうするの?”
おまえはベトコンかと聞いて、”イエス”と答えたら射殺するだけ』
等のジョークを流していました。
このようなクロンナウアーの番組は、戦場にいる兵士達に笑いと元気を与え、人気になりました。
仲間のアナウンサー達には、大いに受けましたが、直接の上司スティーヴン・ホーク中尉からは番組の内容が下品だと、大目玉を受けてしまいました。
また放送で流す曲については、粗野なロックン・ロールではなく、軍が推薦しているウェイク、ネイバース、マントバーニ、パーシー・フェイス等ソフトな曲を流すように言われてしまいました。試しにボブ・ディランと聞いてみると、論外といわれてしまいました。
論外と言われたボブ・ディランの代表作はこちら ↓
当時、このような反戦歌がたくさんラジオから流れていました。当然軍の放送局では、御法度です。
叱られた後、ガーリック二等兵の誘いで現地のジミー・ウォーの店に飲みに行きました。ジミーの店はGIたちが懇意にしている店でした。店主のジミー・ウォーは少々オカマぽい人で、俳優のウォルター・ブレナンに憧れていて、彼のヌード写真を米兵に頼んでいました。
TVでの連続ドラマ『リアル・マッコイズ』で、マッコイ爺さん役で出演したウォルター・ブレナン
この人のヌード写真なんて、欲しい人が居るのがおかしい
出典 ウィキペディア
ジミーの店で飲んでいるとき、店先を通りかかった美少女トリンに目をつけ、後をつけて彼女の通っている英語教室に行きます。そこで教師をしている米軍の軍曹にワイロを渡してトリンに近づこうとしましたが、同じ教室に通っている兄のツアンに止められてしまいました。
そこでツアンと友達になろうとして、ジミーの店で一緒に飲もうとしましたが、ベトナム人嫌いの米兵2人と大げんかとなり、警察沙汰となってしまいました。今度は、厳格なドライウィッツ曹長から直接叱られてしまいます。
この後、ニクソン元副大統領が南ベトナムに訪問し、そのときの記者会見の録音を放送で流す予定でした。クロンナウアーは録音テープを勝手に編集し、ニクソン元大統領を笑いものとしたテープを流しました。
『ベトナムでの戦いの勝利は確信しているが、米国政府に主導権はなく、あくまでも南ベトナム政府と持ちつ持たれずの関係だ。』
“コメントありがとうございました。
個人的な話題に移ります。
どんなこう丸をお持ちで?”
『ソフトで軽く目的意識がない』
“つまり?”
『力強さに欠ける。』
“奥様との性生活は?”
『頻繁にダレる。』
“噂では、マリファナを御利用なさったとか。
どのような手段で
持ち帰ります?”
『飛行機とヘリコプターと車で』
ここまで放送したところで、放送を止められてしまいました。
『』の中の言葉がニクソン元副大統領の言葉です。
ドライウィッツ曹長とスティーヴン・ホーク中尉は、急いでテイラー将軍のもとに行き、クロンナウアーの解雇を要求しました。
テイラー将軍は
「わしはニクソンと親友だが
やつの言葉なぞ、嘘とクソで塗り固めた外交辞令に過ぎない。
それより、兵士達には笑いが必要だ。」
と言って、取り合ってくれませんでした。
そのため二人は、クロンナウアーを排除する、計画を立て始めました。
その日の午後、ジミーの店で落ち込んでいるクロンウナウアーに対して、トウァンがトリンが会いたがっている、と声をかけてきました。トウァンに従ってジミーの店を出た途端、ジミーの店が爆破され、多くの犠牲者が出てしまいました。
クロンナウアーは爆破による犠牲者を運ぶのを手伝った後、放送局に戻り現場の様子を放送しようとしました。しかし、軍が公式の発表を許していないとしてドライウィッツ曹長により、放送を禁じられました。
クロンナウアーは、放送時間になるとアナウンサー室に入り、中から鍵を閉め、今日のニュースを流し始めます。
『サイゴンは、公式には平和そのもの。
非公式には爆弾テロがあり
非公式にジミーの店を破壊
3名が非公式 負傷
2名が非公式 死亡
消防隊は非公式に
現場に急行
・・・・・・・
・・・・・・・』
と、ニュースを流している途中で、アナウンス室の外にいたドライウィッツ曹長によって、番組の電源を切られてしまいました。
ドライウィッツ曹長とホーク中尉は、クロンナウアーを軍法会議にかけるようテイラー将軍に求めるましたが、将軍の裁量で停職処分で収まりました。
暇になったクロンナウアーは酒浸りになって酔っ払っていました。見かねたツアンが自分の村に来るように誘いました。初めは渋っていたクロンナウアーですが、「トリンに会えるよ」の一言で行くことにしました。村に着くと若者はいず、残っている年寄り達は、戦争で身内を亡くした人ばかりでした。そのためクロンナウアーは、村人達から冷たい目で見られました。
では何故アメリカ人と親しくしているツアンとトリンは村にいられるのか。その訳は後で分かります。
クロンナンアーが停職中は、ホーク中尉がディスクジョッキーを務めましたが、局には『タコ殺せ。クロンナウアーを返せ』という抗議の電話や手紙がたくさん送られてきました。そのためクロンナウアーは、テイラー将軍の決断で復職することになりました。
早速ガーリック2等兵がクロンナウアーを迎えに行きましたが、彼は本当のことも言えない、皮肉もダメ、好きな曲もかけられない、でやめるつもりで居ました。そんな彼を連れて帰る途中、戦場に向かう兵士達を乗せたトラックの隊列に出会いました。トラックが停車している時、ガーリックが、ここに居るのはラジオで有名なクロンナウアーだと紹介しました。途端に周りの兵士達から、『いつもの奴をやってくれ』との声がかかりました。おだてに乗せられてクロンナウアーが『Goo-o-o-o-d モーニングベトナム』のかけ声と共に、得意のジョークを連発して周りの兵士達を笑わせました。トラックが動き出すと元気を取り戻した兵士達は、クロンナウアーに手を振って戦場に向かいました。このとき兵士達を見送るクロンナウアーは,いい顔をしています。
翌朝、『Goo-o-o-o-d モーニングベトナム』の挨拶の後、トラックで移動中の友に特別な1曲を捧げました。流したのはルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」です。
映画ではこの歌をバックに、農作業をしている子どもの目の前で米軍のナパーム弾で焼かれる村。爆弾テロで破壊される家。米軍に捕まって、その場で射殺される青年達。学生デモに襲いかかる警察隊の映像が流れます。
クロンナウアーは、アン・ラクの戦地に行って直接GI達と話し、その模様をラジオで流したいと言いました。ドライウィッツ曹長は現地に電話して確認すると、アン・ラクに通じる道路ルート1-Aでは直近48時間でベトコンの活動が活発になり、行く事は危険だとの情報を得ました。その上でドライウィッツ曹長は、クロクナウアーにアン・ロク行きの通行証を発行しました。
案の定ガーリックの運転するジープはベトコンの地雷に触れ、壊れてしまいました。二人は物音に気づいて集まって来たベトコンから隠れながら逃げる羽目となりました。
一方彼が教えている英語教室では、時間になってもクロンナウアーが現れないことに不思議に思ったツアンは、米軍基地に行って彼のことを尋ねました。衛兵の話で彼がアン・ラクに向かった事を知ったツアンは、近くに止まっていた車を盗み、クロンナウアーの後を追いました。
ツアンは無事クロンナウアー達と会うことが出来ましたが、帰ろうとすると車が壊れてしまいました。仕方なく3人でジャングルをさまよっていると、捜索に来たヘリコプターに発見され、無事帰ることが出来ました。
無事に基地に戻ったクロンナウアーでしたが、ドライウィッツ曹長カら国外追放を言い渡されていました。理由は彼が付き合っているツアンが実は本名をファン・ドク・トウと言うベトコンの爆破テロのメンバーでした。彼はジミーの店を爆破した犯人で、そのため爆破直前にクロンナウアーを店から出して助けることが出来ました。またアン・ラクの途中でツアンと一緒にさまよっていた時、ベトコンに襲われなかったのもそのためです。
軍としても、ベトコンと友人である彼を放っておくことが出来ず、話が大きくなる前に名誉除隊させ、翌日の18時30分の飛行機で本国に返すことにしました。
テイラー将軍は、危険なのを隠してクロンナウアーをアン・ロクに送ったことに対して、ドライウィッツ曹長を部隊から外し、グアムに移動させました。
クロンナウアーは急いで英語教室に行きトリンに、ツアンの正体がばれた。彼が危ないから至急会わせろ、と告げツアンの隠れ場所に行きました。
「親友だったのに。信じていたのに。ジミーの店を爆破して仲間の兵隊二人を殺した犯人だったとは。」
とツアンに言うと、
「本当の敵はどっちだよ。ベトナムの共産化を防ぐと言って、呼びもしないのにやってきて、ベトナム人を殺しまくっている。僕の母や兄、隣人や彼の妻もアメリカ兵によって殺された。」
と答えて、隠れてしまいました。この言葉にクロンナウアーは、言うべき言葉を失ってしまいました。
アメリカ行きの飛行はに乗る前に、クロンナウアーは英語学校の仲間と簡単なソフトホールの試合をして、別れを告げました。その中にはトリンの姿もありました。
飛行機に乗る直前、クロンナウアーはガーリック2等兵に、別れの言葉を入れた録音テープを渡しました。
そのテープの最後には、
「軍服脱いだらパンプス履いて
そしてこう言うの
“我が家が一番ね”
オズの魔法で祖国に帰れるワ
みんな そうなりますように」
これはオズの魔法使いで、家に帰りたいと悲しんでいるドロシーに、北の魔女が
「もうあなたは、いつでも家に帰れる魔力を持ってるワ。
靴のかかとを会わせて
“我が家が一番”
と、唱えるだけでいいのよ」
と、教えたことから来ています。