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亀仙人2映画 「THE WAVE ウェイヴ」
2008年ドイツ
第2次世界大戦前、なぜ多くのドイツ人がヒトラーの独裁政権を支持するようになったか、この映画を通じて学んでみたいと思います。
1967年アメリカ、カリフォルニア州の高校で教師ロン・ジョーンズ(アイキャッチ画像の人)によって、ドイツの人たちがどのようにしてヒトラーを受け入れたか体験する実験(サードウェイブ実験)が行われました。その結果は驚くべきものでした。
この映画は、そのサードウェイブ実験をもとにして、ヒトラーの出身地ドイツで作られました。
製作 2008年 ドイツ
監督 デニス・ガンゼル
脚本 デニス・ガンゼル、ペーター・トアヴァルト
原作(小説) モートン・ルー「ザ・ウェーブ」
出演 ユルゲン・フォーゲル フレデリック・ラウ
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あらすじ(ネタバレあり)と解説
この映画の主人公ライナー・ベンガ―は、出産間近な妻アンケ・ベンガート共に同じ高校で教師をしています。二人は湖に浮かべたボートハウスで生活しています。
ライナー・ペンガーは授業で「無政府主義」の実習を受け持ちたいと思っていましたが、同僚の教師ビーラントが一足先に校長に完璧な実習計画を提出していたため、仕方なく「独裁」の実習を受け持つことになりました。
ベンガ―は水球部のコーチもしていて、その中には生徒のマルコが居ます。マルコの恋人カロは演劇部に所属しています。
水球部にはトルコ出身のジナンが居て、体の大きなボンバーと大金持ちの息子ケビンと共に不良グループを形成しています。
その不良グループに、「ヤク(麻薬)」などの貢物をしている気の弱い男の子がティムです。
このあたりが映画の主な出演者です。
マルコは実習で何をとるか決めていませんでしたが、同じ水球部のジナンがカロと話をして「独裁」に決めたのを見て自分も「独裁」の実習を受けることにします。このあたり。マルコの自主性と決断力のなさが見て取れます。
月曜日
「独裁」の実習授業の初日です。
最初のフリートークで「独裁」についていろいろな議論が出ましたが、「今のドイツでは独裁はあり得ない」との発言に疑問を感じました。
水球部のコーチをしているベンガ―には、コーチと選手の関係を一般な社会に持ち込めば、独裁があり得るのではないかと思ったのです。
また生徒たちが「今のドイツでは独裁はあり得ない」と思ったのも理由があります。
ドイツでは小さい時からナチスドイツが権力を掌握した原因や過程、そしてナチスが人種イデオロギーによって、周辺に与えた甚大な悲劇について詳しく学びます。
そして、ヒトラーの様な独裁政治家が出現し、この様なことが二度と繰り返されないよう教育されています。
ここでベルガーは10分間の休憩をとり、教室の席替えを行いました。
今まで仲良しグループごとに座っていた席を、歴史には強いが数学に弱いものと、数学に強いが歴史には弱いものを同じ席に座らせ、お互い助け合って成績の底上げを図ると同時に、仲間意識を強化する目的がありました。
授業が再開され、「独裁」に必要な強い権力を持った指導者が必要であるとのことで、誰を指導者にするか決めることにしました。
不良グループのリーダーで金持ちの息子ケビンが志願しました。評決の結果、大多数の支持を得て教師のベンガ―が指導者の役をやることになりました。
まず、授業では指導者であるベンガ―を「ベンガ―様」と呼ぶこと。机の上に飲み物などの余分なものを置かないこと。常に背骨を伸ばしたきちんとした姿勢で座ること。発言する時は、手を上げベンガ―様の許可を受け、立って発言すること。発言は短く整理してから発言すること、などが決められました。
これに対して、反発したケビンは教室から退出させられました。ケビンは不良仲間のジナンとボンバーを誘って教室から退出しましたが、ジナンとボンバーは卒業できなくなることを恐れて、教室に戻ります。これは、集団の掟を守らない異分子を排除することになります。
この後の授業はベンガ―様の指導により、効率的に進むようになりました。
このことに一番喜んだのは、いじめられっ子のティムです。彼はこれまでと違い積極的に発言を繰り返します。
ティムは家に帰ってから両親に今日の出来事を話しました。両親はヘンだと思いながらも、ティムに積極性が出たことに喜びます。
カロも母親に、
「突然教室の生徒全員がベンガ―の奇妙な命令に従うようになって、何かおかしい」
と言いました。母親は
「おかしいと思っているのなら、大丈夫よ」
と答えます。
ここで注目していただきたいのは、異分子を排除したことです。集団の団結を乱す異分子を認めるか、認めないかが民主主義と「独裁」の大きな違いです。
独裁政治家では、指導者の力により効率的な政治が行われます。排除された人は、その集団から外されるデメリットを感じ、独裁者の元に戻るしかなくなります。
とくに一党独裁の場合は、合法的に異分子を吸収する政党や組合がなく、独裁制の社会では生きていけなくなります。
火曜日
授業のためベンガ―が教室に入ると、生徒全員がきっちりと座り、声をそろえて
「おはようございます。ベンガ―様」
と挨拶しました。
「昨日の続きか?」
との問いに、全員が
「そうです。」
と答えます。集団としての統制がとれて来たようです。
ベンガ―は全員起立させ、その場で足踏みをさせました。
「何のためにやるの」
との声が上がりましたが、ベルガーは、
「全員が団結して、一つの集団となるまでだ」
として続けます。
皆がダラダラと足踏みを続ける中に、一人だけ張り切って足踏みをしているものがしました。それは引っ込み思案なティムでした。ティムは自分が足踏みをするほかに、積極的に「ベルガー様」の指示に従って足並みをそろえるよう、周りの人間に声をかけます。
やや足並みがそろってきたところでベルガーが声をかけます。
「この教室の下は、『無政府主義』を教えているビーラントの教室だ。奴らの頭に天井の破片を降らせろ」
その声に生徒たちは一斉に声を上げ、勢いよく足踏みを続けました。下の教室にいたビーラントと生徒たちは、授業を中断せざるを得なくなります。
ここで大切なことは、生徒たちは善悪の区別がつかなくなり、集団で暴力をふるうことに快感を感じてしまったことです。でも皆は、まだそのことに気が付いていませんでした。
後で教師のビーラントは、校長の前でベルガーに対して抗議しましたが、『無政府主義』の講座から『独裁』に移りたいと希望する学生が現れたことで、抗議は立ち消えになりました。
ベルガーは実習の間だけ、皆の団結を示すものとして、制服を着ることを提案しました。経済的な負担を考えて、白いシャツとジーンズが決められましたが、中には白シャツを持っていない者もいました。
イェンスはその人のために自分が2枚持っているから、貸してあげようと言います。
学校が終わって衣料品でリーザが白シャツを買っていると、イェンスが白シャツを2枚買っているのを見てしまいました。本当はイェンスも白シャツを持っていなかったのです。
カロは白シャツを着てみましたが、似合わないので、着ないことにしました。
水曜日
ヘルガーの授業に批判的なモナは実習コースを変更し去っていきましたが、新たな仲間が増え教室は定員いっぱいになりました。
カロは白シャツは似合わないと思い、いつもの赤いシャツで出席しました。しかし、教室は白シャツで埋め尽くされており、カロは何となく違和感を感じます。また他のメンバーは、決まりを守らないカロに対して反発しました。
授業では更に団結を強めるため、何が必要か考えます。
まずグループ名を何にするか決めますが、いろいろな意見が出ましたが投票の結果「ウェーブ」に決まりました。
カロの提案した「変革者」はカロ以外に賛成する者がいなかったため、カロは、皆からつま弾きされているように、感じてしまいます。
グループ名が決まり、ベルガーはただ組織を作っただけでは無意味なので次に何をするか話し合わせました。
その結「ウェーブ」のロゴを作ることや、ホームページを開設することなどが決まりました。
ロゴのデザインはマルコが受け持ち、ホームページ作成はティムが自ら申し出て、彼に決まります。
ベルガーは生徒たちが自主的に活動方針を決め、実行し始めたことに喜んでいましたが、これには大きな危険が潜んでいました。
メンバーがそれぞれ勝手に行動するため、指導者の統制が取れなくなってしまうことです。
ナチスドイツの場合で言えば、ヒトラーの東欧侵略によって、何百万人ともいえるユダヤ人の処置について、「ユダヤ人問題の最終的解決」を任されたハイドリヒ親衛隊隊長兼国家保安本部長官が、ヒトラー抜きの会議でホロコースト(ユダヤ人を中心とする大量殺戮)の実行を決定しました。
詳しくはこちらをご覧ください↓
授業の後で、ティムはパンクの連中から「ヤク」の取引に絡んで揉めましたが、元不良グループのジナンとボンバーが助けに入りました。
ティムはかって自分をいじめていた、ジナンとボンバーが「ウェーブ」の仲間だということで助けたことに感激して、ますますはまり込んでしまいます。
カロが演劇部の稽古も休んだため、部長のデニスは今までなく強い態度で、カロ抜きの配役を決定しました。このあたりにも「ウェーブ」の影響が見えます。
金持ちの息子ケビンもジナンとボンバーの説得で、実習には戻りませんが「ウェーブ」の仲間に入ることにします。あと、その場に居たカロの弟、レオンも入りました。このようにして、「ウェーブ」は実習の教室から離れて規模が拡大していきました。
ベンガ―は家に帰り妻のアンケに、怠け者のカシがその日のうちに「ウェーブ」のメンバーの紹介記事をネット上に投稿したのを見せて、メンバー全員にやる気が出てきたと自慢しました。
そのころ「ウェーブ」のメンバーは、完成した「ウェーブ」のロゴを町中にスプレーで描いたり、ケビンが作ってきたロゴのシールを貼ったりしたいました。
引っ込み思案のティムはやたら張り切って、工事中の教会を覆っているシートに大きく「ウェーブ」のロゴを描いてしまいます。
木曜日
大男のボンバーは、「ウェーブ」仲間の挨拶として、新たな敬礼方法を考え着きました。
ベンガ―は、ボンバーが考え付いたウェーブ式の敬礼を気に入り、団結力を高めるため朝の挨拶の時に皆と練習します。
教室の外では「ウェーブ」の動きの反対する声が上がり始めました。
最初は実習に参加している生徒の保護者達からです。特にティムの親からは、彼が「ウェーブ」にのめり過ぎて不安だとの訴えが届きました。
カロはあたらしく「ウェーブ」に参加した弟のレオンが、入り口を通る生徒にウェーブ式の敬礼を強要するのを見て、ベンガ―に「ウェーブ」を中止するように言いましたが、「あと一日だ」と言われ聞いてもらえませんでした。
カロは「ウェーブ」から去って行ったモナと一緒に新聞部を訪れ、「ウェーブ」の批判記事を掲載するよう頼みましたが、断わられてしまいます。
しかし、カロとモナは新聞部長から内緒で生徒全員のメールアドレスを手に入れ、メールの作成を始めました。
そこにカロを探していたマルコが入って来て、「ウェーブ」をめぐり言い争いを始めます。険悪な空気を察したモナは、二人を置いて部屋から出ていきました。結局二人の話はけんか別れとなり、カロは一人でメールの作成に取り掛かりました。
いざメールを送ろうとしましたが、手に入れたメールアドレスにはガードが掛かっていて送れません。仕方がないので夜中まで掛けて、メールの文書を印刷し、各教室の入り口に置いて帰りました。
ジナンたちは、その晩「ウェーブ」のメンバーを中心とするパーティを、河原で開催する計画を話し合いながら歩いているところを、パンクの連中に襲われ、乱闘状態になります。一緒にいたティムは拳銃を抜き、リーダーの大男に狙いをつけ、追い払いました。
ティムはその後ベンガーの家に行き、彼を警護すると言ってききませんでした。ベルガーはとりあえずティムに夕食を食べさせ、外に追い出しました。
河原で行われたパーティーの最後に、ジタンとマルコは次の日の午後行われる水球部の試合に白シャツを着て応援に来てくれるよう、頼みました。
金曜日
朝刊を取りに出たベンガーは、そこにティムが居るのに驚きました。ティムはベルガーの家のそばで、一晩過ごしていたのでした。
ティムを乗せて車でで登校している途中、立体交差の上からパンクと思われる者から赤いペンキを投げつけられます。ティムはこの事件の後、常にベルガーの後ろについて歩くようになりました
一方学校ではカロが撒いたチラシを発見した「ウェーブ」の連中は、彼女をどうにかしろと、マルコに詰め寄りました。マルコは試合の後で、彼女に話すと答えます。
授業が始まり、ベンガーは生徒たちに、今朝の朝刊に教会の工事のために張られたシートに大きく「ウェーブ」のロゴが描かれた記事と写真を示して、やりすぎだと叱りました。
今日はこの一週間、独裁について体験したことのレポートを提出して終わります。
水球の試合会場の前ではボンバーたちが、私服で来た人たちに白シャツに着替えて一緒に応援するよう、ロゴ入りの白シャツを渡していました。
カロとモナも入ろうとしましたが、断られてしまいます。
試合は有利に進んでいましたが、カロとモナが「ウェーブ」に反対するビラを応援席で撒きはじめたため、場内は騒然となり、選手同士の乱闘も始まり、試合は中止されてしまいました。
家に帰ったベルガーは、この乱闘事件で妻のアンケから
「生徒に崇拝され、自分のために生徒を操っている」
と責められました。ベンガーが言い返すと妻のアンケは
「人として腐っている」
と言い放ち、家から出て行ってしまいました。
マルコもカロがチラシを撒いたことで、勝っていた試合が中止になった為喧嘩し、思わずカロを殴ってしまいました。
マルコはベンガ―の元に訪れ、カロを殴ったことを話し、「独裁」のせいで自分が変わってしまったと話しました。そして、「ウェーブ」の中止を求めました。
ベンガ―は「ウェーブ」のメンバーに、明日の12時に講堂に集合するようメールを送りました。
土曜日
ベンガ―は集まったメンバーを前に、前日提出させたレポートの一部を読み上げます。
- 欲しいものは何でも手に入ったが、毎日が退屈だった。でも、今週は楽しかった。
- 誰が一番イケてるとか人気者とか関係ない。ウェーブは皆、平等だ。
- 民族や宗教や階級を超越して、皆が一つになった。
- ウェーブの目的や理想は支持に値する。
- 自分は良くカツアゲしたが、愚かだった。ウェーブに取り組む方がいい。
- 皆で助け合うと、成果も大きい。どんな犠牲でも払う。
等、肯定的なものばかりでした。ベンガ―は
「皆のレポートを読んで非常に感激した。ウェーブは存続させるべきだ。」
と発言します。マルコは、
「それでは話が違う。」
と抗議しましが、ベンガ―はマルコの抗議を打ち切って、さらに続けました。
「ドイツはいま、下り坂だ。グローバル化が進むなか、政治家は効率化こそ、解決策だという。その結果失業率もよくなり、輸出額も伸びたが、その陰で金持ちと貧乏人の間の格差は広がる一方、少しずつ地球が破壊されるなかで、大富豪連中は仲間と一緒に、高みの見物と洒落込んでいる。」
話の途中で、マルコは立ち上がり
「皆、目を覚ませ。奴は皆を扇動している。」
と声を上げます。ベンガ―はマルコの抗議を無視して続けます。
「俺は真実を言っている。ウェーブこそ唯一の正解だ。団結は力なり。いまこそ、我々が歴史に名を残す時が来た!
止めないぞ。
われわれウェーブがドイツ全土を飲み込む!。われわれの邪魔をする者は、叩き潰す」
演説の一語一語に参加者から、大きな歓声と、拍手があがります。
マルコも、その間中抗議の声を上げ続けていましたが、ベンガ―の
「反逆者をここへ・・。」
との声で前に連れ出されていました。
ベンガ―は続けます。
「反逆者をどうする?
俺が『殺せ』と言えば、殺すのか。
奴が我々に従うまで、拷問するのか。
・・・・・・・・・・・・・・
気がついていたか。これが『独裁』の実態だ。」
そう言ってベンガ―は、マルコに謝ります。
「最初の事業を覚えているか。”今のドイツで『独裁」はあり得ない”と。この状態がまさに独裁だ。自分たちを特別な存在だと思い込み、反対する者を全員排除した。そして、傷つけた。他にも過ちを犯したかも。
君たちに謝るよ。われわれはやり過ぎた。俺の責任だ。
ウェーブは解散する。
全員家に帰れ、反省が山ほどあるはずだ。」
この後、ウェーブの解散に反対する者によって、大きな悲劇が起こりました。このためベンガ―は逮捕され、パトカーで連行されていきました。
この悲劇が何かは、映画を見てください。
残されたウェーブのメンバーは、あまりの出来事にその場に無言で立ちすくみ、中には泣き出す子もいました。
『独裁』とは、大多数の支持をいいことに、反対者を排除し、独断で政治を行うことであり
『民主主義』とは、手間がかかっても反対者と共に生き、反対者と共に統治することです。
この映画の原作、モートン・ルー著「ザ・ウェーブ」はこちら⇩
表紙だけを見るとコミックみたいですが、中身はちゃんとした小説です。
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また、現在のドイツにヒトラーが蘇ったらどうなるか?、を描いた映画があります。ヒトラーのそっくりさん俳優(映画では本物のヒトラー)に、ドイツの人たちが好意的なのが気になります。
日本でも「サードウェーブ実験」を大学の授業でとり入れてるところがあります。こちらをご覧ください。
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