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亀仙人2映画「大いなる幻影」
1937年 フランス
「西部戦線異状なし」と共に第1次世界大戦を題材とした映画では、絶対に外すことのできない映画です。第1次世界大戦中の捕虜収容所を舞台としています。
監督
ジャン・ルノワール
脚本
シャルル・スパーク
ジャン・ルノワール
製作
アルベルト・ピンコヴィッチ
フランク・ロルメール
出演者
ジャン・ギャバン
ディタ・パルロ
ピエール・フレネー
エリッヒ・フォン・シュトロハイム
音楽
ジョゼフ・コズマ
撮影
クリスチャン・マトラ
編集
マルト・ユゲ
マルグリット・ルノワール
あらすじと感想
第1次世界大戦後に作られた反戦映画の傑作とされる作品ですが、戦闘場面はないし、この映画で死ぬのはフランス軍のボアンデュ大尉一人だけで、近ごろの映画のように砲撃を受けてバラバラになったり、大勢の人々が次々とやられてしまう残酷な場面はありません。
この映画では平和な時にはなんでもない、国や身分を超えた出会いと友情、恋愛が戦争によって断ち切られる様を描いています。
敵との交流を題材にしたこの映画は、アメリカなどの自由主義の国では絶賛されましたが、日本・ドイツなどのファシズムや軍部が支配していた国では上映禁止となりました。
第1次世界大戦、ボアンデュ大尉とマレシャル中尉は偵察飛行中、ドイツ軍のラウフェンシュタイン大尉によって撃墜されてしまいます。
二人は大した怪我もなく収容され、ラウフェンシュタインによって昼食に招かれます。2人は捕虜でありながらも勇敢に戦った戦士として丁寧にもてなされ、同じ貴族出身のボアンデュ大尉とラウフェンシュタイン大尉は共通の知り合いがいることで、親しみを覚えます。
後に捕虜収容所の所長として再登場してくるシュトロハイムが演じるドイツのラウフェンシュタイン大尉は、映画の初めからすべての言動が重々しく大きな存在感を放っています。
捕虜収容所に送られた2人は、同室の仲間が脱走用にトンネルを掘っていることを知り、一緒に掘り続けます。同室の仲間に銀行家の息子ローゼンタール中尉が居り、彼はバリから缶詰やワインを送らせて同室の一同は戦時中にもかかわらず豪華な食事をとることが出来ました。
収容所で行われた演芸会の最中ドイツに奪われたドーモン要塞をフランス軍が奪回したことを知ったマレシャルはフランス国歌ラ・マルセイエーズを歌い出し、独房に監禁されて今います。スポーツ中継などでおなじみの曲ですが、字幕の歌詞を見るととても好戦的な歌詞で、ドイツ軍の目の前で歌ったマレシャルが拘束されたの当然だと思います。
長い拘束に耐えかねて大声を出したマレシャルに、看守はそっとハーモニカを差し入れました。彼はハーモニカを吹き始め、扉の外では看守がじっとそれを聞いています。
トンネルが完成して、脱走を決行しようとした日、マレシャルとボアンデュは他の収容所に移転されてしまいました。いくつかの収容所で脱走を企てた2人は、悪質な捕虜を収容するために造られたヴィンタースボルン収容所に回されてしまいます。
そこには2人を撃墜したドイツのラウフェンシュタイン大尉が脊椎を痛めギブスで固定して、所長として赴任していました。
古城を改造して作られた捕虜収容所は、元貴族のラウフェンシュタインの醸し出す雰囲気とぴったり一致しています。
フランス人貴族のボアンデュは、なぜ自分を特別扱いをするのかラウフェンシュタインに尋ねました。
「それは、あなたが私と同じ貴族だからだ。この戦いは誰が勝つかわからないが、これからはマレシャルやローゼンタールのような労働者や資本家が主体になる世界に代わり、我々貴族の時代は終わるだろう。悲しくありませんか?。」
二人は滅びゆく者の虚無感と悲壮感を共有し、最後まで貴族の一員として立派に振舞うのであった。
収容所にいるロシア兵に、皇后から慰問の品物が届いた。キャビアやウォッカが入っていると思い喜んで開けたところ、入っていたのは「基礎代数学」「倫理概論」「ロシア語文法」などの書籍であった。怒ったロシア兵たちは本に火をつけ、収容所全体が大騒ぎになり、衛兵全員がその騒ぎを収めるため出払ってしまった。このことがヒントになり脱走の計画を立てる。
脱走当日、捕虜全員はかねてから用意していた笛を吹き大騒ぎします。城の衛兵たちは総出で笛の回収に当たりました。笛を取られると今度は洗面器や金ダライを叩いて全員で合唱しました。
はじめはでたらめに笛を吹いたり、大声をあげているだけかと思いましたが、ある人がこの時の曲は古いフランスの童謡で
「IL ÉTAIT UN PETIT NAVIRE (小さなお舟があったとさ)」
という曲だと教えてくれました。(上をクリックするとYOU TUBEに繋がります)
歌の内容は
むかしむかし、4人の水夫が小さな船に乗って航海に出かけました。航海は長引き、ついに食べ物が無くなってしまいました。4人はくじを引き、負けた人を食べることにしました。くじで負けた若い水夫はマストに登り、皆に食べられないよう、必死に神様に祈りました。かわいそうに思った神様は、船にたくさんの魚を飛び込ませ、若い水夫は助かりました。
童謡にしては残酷な歌詞ですね。
このあとの総点呼で、マレシャルとローゼンタールを逃がすため、おとり役を買って出たボアンデュ大尉は、白手袋をはめ死を覚悟して城中を逃げ回ります。衛兵たちが彼に気を取られている最中、マレシャルとローゼンタールはロープを使って、高い崖の上に作られた古城からの脱出に成功しました。
一方ボアンデュ大尉は、収容所所長のラウフェンシュタイン大尉に撃たれて傷を負ってしまいます。瀕死の傷を負ったボアンデュをラウフェンシュタイン見舞いに行きます。
「許してくれ、私は足を狙ったのだ」
「同じ立場なら私も撃っていた。あれだけの距離と悪い視界なら」
「かばう必要はない、私の腕が悪かったのだ」
「私はもう死ぬが、哀れなのはあなただ」
「そう、私は空っぽの体を引きずり生きていくしかない」
「戦争で死ぬのは恐ろしいことだが、あなたと私にはよい解決法かもしれない」
死ぬ間際の、敵である相手に重荷を負わせまいとする気づかい、人としての精神の高貴さ窺えます。
無事収容所を脱出できた、マレシャルとローゼンタールですが問題が起きます。金持ちの息子のローゼンタールは、長い逃避行で足を痛めてしまいました。先を急ごうとするマレシャルと、歩くのが辛くなってきたローゼンタールは喧嘩をし、別々に行動することになりました。
「別れてせいせいした。歌でも歌いたい気分だ」
と言ってお互いに大声で怒鳴りながら別れるのが、上の(小さなお船があったとさ)というフランスの童謡です。
一人になったローゼンタールがしょんぼりとして座っていると、マレシャルが戻ってきて、一言
「行こう」
二人は、また一緒に歩き始めました。
途中ある農家の納屋に逃げ込んだ二人ですが、そこに夫や兄弟を戦争で亡くしたエルザが牛を連れて戻ってきました。エルザは二人を見て驚きますが、ローゼンタールが足を痛めているのを見て、傷が治る迄二人をかくまったのでした。言葉が通じないながら、マレシャルとエリザはお互いに惹きつけられていきます。また一人娘のロッテも二人になつくようになりました。
ローゼンタールの傷が治り、出発の日が来ました。マレシャルはエルザに
「戦争が終わって、生き残っていたら必ずここに戻ってくるつもりだ。」
と言い残し、スイスに向かって旅立ちます。
ドイツの国境警備隊が二人を発見したときは、スイス領内に入った後でした。
この映画を見てこう思いました。貴族が平民を助けるために自分の命を投げ出すだろうか、兵士が自分が撃った兵士を訪れ、詫びを入れるだろうか、夫や兄弟を殺された女が敵軍の兵隊を恋することが出来るのだろうか。このように実際には起こりえない夢物語(幻影)を描くことによって、人間と獣を分ける尊い精神のありかを示し、その精神を奪い取る戦争に反対している。
この映画が公開された翌年(1938年)、日本に輸入されましたが検閲により公開禁止となりました。日本で公開されたのは戦争が終わった4年後の1949年でした。これから戦争しようとする国にとって、この映画は邪魔な存在だったのです。
映画 「西部戦線異状なし」の解説はこちら ↓
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