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亀仙人2映画「追想」
1956年 アメリカ
ロシア革命後の1918年7月17日、ニコライ2世一家は射殺されてしまいました。
皇帝のみならず、幼い子供たちも射殺したことで世の中の批判を恐れたポルシェヴィキ政権は「ニコライ二世のみが処刑されたが、家族は安全な場所にいる」と発表しました。
このため、ニコライ2世の第4皇女アナスタシアがロシア革命後も生きているとの伝説が生まれます。
この伝説をもとに映画「追想(原題アナスタシア)」が生まれました。
アイキャッチの写真は190年に撮った皇女アナスタシア 出典ウィキペディア
監督 | アナトール・リトヴァク |
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脚本 | アーサー・ローレンツ |
製作 | バディ・アドラー |
出演者 | ユル・ブリンナー イングリッド・バーグマン ヘレン・ヘイズ |
音楽 | アルフレッド・ニューマン |
撮影 | ジャック・ヒルデヤード |
編集 | バート・ベイツ |
配給 | 20世紀フォックス |
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あらすじと解説
アナスタシア伝説とアンナ・アンダーソン
ソ連共産党当局が政権基盤が固まるまで「ニコライ2世は処刑されたが、他の家族は安全な場所に護送された」との偽情報を流し続けたため、第1次世界大戦後、ロマノフ家の生き残りであるという人が200人以上現れました。
その中で一番有名なのがアンナ・アンダーソンです。
この映画は彼女の話に、大きな影響を受けています。
事の起こりは、ベルリンで自殺しようとしていた女性を発見したことから、始まります。
下は当時の警察記録です。
1920年2月18日、ベルリン。身元不明の娘による自殺未遂事件。昨日、午後9時、20歳前後の娘が自殺の意思を持って、ベントラー橋からラントヴェール運河(英語版)に飛び込んだ。娘は巡査部長に助け上げられ、ルツォウ通りのエリーザベト病院に収容された。所持品の中には身分証明書や貴重品に関する物は皆無で、娘は自分の身元についても、自殺未遂の動機についても口を閉ざして語ろうとしない。
引用ウィキペディア
自殺未遂から2年後、精神病院に入院していたアンナ・アンダーソンは、保護してくれたクライスト男爵夫妻に自分がアナスタシアであると話し出しました。
耳の形やほくろの位置、外反母趾など皇女アナスタシアと身体的特徴が似ていたことと、なぜか旧皇室にかかわったものしか知らない子細な事柄を知っていたことなどで、ロマノフ家に連なる旧ロシア貴族の一部を含む、多くの支持者を得ました。
そして1920年代、自分は皇女アナスタシアとして、ロマノフ王朝の遺産相続人として認めるよう、裁判をおこします。
映画「追想」が作られていた時、この裁判は継続中でした。
この裁判は長引き、1970年2月17日西ドイツの最高裁判所はアナスタシアであることを証明するのに十分な証拠を提供していない、ということで訴えは退けられました。
彼女は1984年2月12日に亡くなりましたが、1991年、ソビエト連邦が崩壊したことで、ニコライ二世一家の遺骨が公開され、DNA鑑定の結果、彼女の正体は、かねてから言われていた、フランツィスカ・シャンツコフスカというポーランド人農夫の娘で、アナスタシア本人ではない、ということが判明しました。
あらすじ(ネタバレいっぱい)
出会い
1928年パリ、ロシア正教の復活祭の日教会近くの店先で、アンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)は店頭に飾られていたニコライ2世一家の写真を見ていました。彼女は精神病院に入院していた時、修道女に自分は皇女アナスタシアと告白して居ました。
ボーニン将軍(ユル・プリンナー)は彼女の居所を確かめるため、後をつけます。
ボーニンは、アンナが川に飛び込もうとする直前、彼女を保護して自分の事務所に連れて行きました。
事務所には、元ペテルスブルグの銀行家チェルノフと宮廷執事の息子で元神学生のペトロビンが居ました。
この3人は、ロマノフ家にゆかりのある皇族や貴族から資金を出してもらい、ロマノフ家の生き残りの人を探していました。
この3人は別の目的がありました。ロマノフ家の人間を探し出し、イングランド銀行に預けてある1000万ポンドと言われるロマノフ家の遺産の分け前にあやかろうというものです。
ところが資金援助をしていた皇族や貴族が、8日以内にニコライ2世の家族を見つけられない場合、援助を打ち切ると言ってきたのです。
そこで3人は、記憶喪失のアンナを急遽皇女アナスタシアに仕立て上げることにしました。
初めての拝謁
歩き方から礼儀作法、地名や人名それにまつわるエピソード等、寝る間も惜しんでアナスタシアになるための特訓が始まりす。
しかし8日という日数では、あまりにも時間が足りません。デーニンは一計を案じて、皇女は病気を患わっているとして、長椅子に横たわったままなるべく口を開かないようにし、皇室ゆかりの者6人を選び、拝謁させることにしました。
選ばれた6人は、次々と名前を呼ばれ、アンナに拝謁しました。この時アンナは後ろに控えていた女性を呼び出し、名前を告げられるまえに、彼女が母親付きの女官であり、「ニーニ」という愛称で呼んでいたと話しました。
この出来事に、デーニンをはじめ周りの人々は驚きました。
更に大勢の人に
アンナを皇女アナスタシアとして法的に認めてもらうのには、大勢の人に証明書にサインしてもらう必要があります。
デーニンは先の拝謁式に出席したうちの一人、リッセンスカヤ夫人に頼んで、大勢の人を集めてくれるよう頼みました。
証明書にサインをもらうため、アナスタシアに化けるための特訓が続きます。
ダンスの練習中、疲れが出てきたアンナをいたわるため、アンナの好きなワルツを踊ります。
この時のデーニンは、アンナを心配してか、いつもの鋭い目つきではなく、やさしい目になっていました。アンナもその目につられて、初めての舞踏会で、初恋の人と一緒に踊ったときの思い出を話し始めます。
二人は、回るレコードにつられて、ずっと踊っていました。
このシーンは短いですが重要ですので、覚えておいてください。
これ以後、たまにデーニンは、やさしい目でアンナを見る時が出てきます。
訓練を続けるにつれ、アンナには皇女として必要な気品と威厳が、備わってきました。主演のイングリッド・バーグマンが見事に演じ切っています。これは目に見えるものではないので、それを写し撮ったカメラマンも素晴らしいと思います。
いよいよ大勢の人の前に、アンナが立つことになりました。
しかし、招待された客の多くは、アンナを皇女アナスタシアとは見ず、ロマノフ家の遺産を取ろうとしている、演技の上手い役者だと見ていました。集まった客の多くはそれぞれ地位や名誉の有る人々でしたから、どこの馬の骨ともわからない女性に見下された態度をとられ、腹を立ててしまいます。
その代表が、元侍従長だったワシリウィッチです。
彼は紹介なしでアンナの前に立ちます。
アンナは一目で彼の名前と性格を言い当てました。
しかし、ワシリウィッチは動じませんでした。
「よく覚えこまれました。しかしそのようなことは、人に教えてもらえば分かること。
私は皇女方を公式の場で見ただけ。したがってわたくしの判断材料は、顔立ちの相似と、その物腰。確かに顔立ちはわたくしが錯覚を起こすほど、よく似ていらっしゃる。
確かにあなたはうまい役者だ。堪能させてもらいました。
しかし、皇女なら立ち居振る舞いで、即座にそうと分かるはず。皇女らしい振る舞いが一つでもあれば・・・それは覚えこまされた万言に勝ると。失礼を。」
そういって振り向いたとたん、アンナが一言。
「許しも得ず。無礼な」
驚いて振り返ったワシリウィッチは
「あなたはいったい、どなた様で」
二人のやり取りを見ていた人々は一瞬、シーンとなりました。
しかし、招待した51人のうち、アンナが皇女アナスタシアとして認める書類にサインをしたのは18人で、これではお話になりません。
デーニンは、次に打つ手を考えます。
皇太后マリア・フェオドロブナとの謁見
先の会見で大勢の見世物にされたうえ、本物と認める署名を頼んだことに嫌気がさしたマリアは、何もかも放り投げて出て行こうとしました。
デーニンはアンナに、皇太后マリア・フェオドロブナと謁見する計画を打ち明け、言い争いの末、納得させました。
デーニンとの言い争いに折れたアンナに対して、手を差し伸べ手握り、無言のまま手の甲に接吻します。
ウィキペディアではマリア・フョードロヴナとなっていました。
ロシア皇帝アレクサンドル3世の皇后で、ニコライ2世の母、皇女アナスタシアの祖母になります。
デンマーク王クリスチャン9世と王妃ルイーゼの3人姉妹の次女で、姉はイギリス王エドワード7世の妃アレクサンドラです。
そのため、この姉妹の子供でいとこ同士の、ロシア皇帝ニコライ2世とイギリス国王ジョージ5世はそっくりで、公式の場ではしょっちゅう間違えられたそうです。
ついでに書くと、ロシア皇帝ニコライ2世と、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世もいとこ同士でした。
末娘のテューラ・ア・ダンマークはコペンハーゲンでハノーファー元王太子のエルンスト・アウグストと結婚しました。
1917年に起きたロシア革命で、息子ニコライ2世が皇帝から退位してロマノフ朝は崩壊し、1918年ニコライ2世一家は幽閉先のエカテリンブルクで全員射殺されてしまいました。
ロシア革命により、マリアと娘一家、一部の皇族・貴族はクリミア半島のヤルタに幽閉されてしまいました。妹が幽閉されている事を知った姉アレクサンドラはマリアとその一家の救出に奔走し、甥のジョージ5世が戦艦マールバラを差し向け、皇太后マリアと娘一家をクリミアから黒海を経て救い出しました。
脱出後しばらくはアレクサンドラのいるイギリスで暮らしていましたが、故郷デンマークに亡命して、姉アレクサンドラと休暇を楽しむために買っておいた別荘で、余生を送りました。このときの生活費はアレクサンドラの夫エドワード7世が、面倒を見ていました。
マリアは死ぬまでニコライ2世一家の生存を信じており、後に孫娘のアナスタシア皇女だと名乗る女性が現れても、マリアは面会を拒み続けていました。
コペンハーゲンに着いた時には、二人はすっかり打ち解けていました。これまで、怒ったような顔でアンナを睨めつけていたデーニンの表情が、だいぶ違ってきました。
突然こんなことをするので、アンナ(イングリッド・バーグマン)が驚いているところ。実は軍隊式幸運のオマジナイ。
危険人物と言われて、アンナの横で笑うユル・プリンナー
コペンハーゲンに着いたデーニンは、皇太后の女官リーフェンバウムに会い、皇太后が木曜日にオペラを鑑賞に行く予定を聞き出しました。
木曜日デーニンは、皇太后一行の貴賓席の真向かいに席を取りました。
アンナは緊張していましたが、皇太后はカーテンの陰に隠れて見えませんでした。
幕間にデーニンは、皇太后の甥であるポール大公にアンナを紹介しました。彼はかって皇女アナスタシアと婚約していて、今は皇太后のもとに寄宿しています。
ポール大公とアンナが話をしている間に、デーニンは皇太后のもとに、一度アンナに会ってくれるょう直訴しました。
しかし、皇太后にアンナとの面会は断られてしまいます。
劇場から帰った後、デーニンはポール大公から招待が来てるので、アンナに受けるよう伝えました。
「頼んだのね」
「いや、私は受けただけ」
「今度はポールを利用するのね。遠慮を知らない人」
「知ってるさ。だが、後には引けない」
そう言って彼は自室に入っていきます。その時、椅子に掛けたデーニンの外套が、床に滑り落ちてしまいます。アンナはその外套を拾って、ほこりを払って掛け直そうとしましたが、そのまま床に放り投げて、部屋に入って行ってしまいました。
こういった何気ないシーンが、二人の気持ちを表しています。
ポール大公とのデートで、アンナはシャンパンを飲んではしゃぎまくっていました。二人が盛り上がっているところに、デーニンが現れ、
「殿下はまだご病気で、医者に長居は禁じられています。」
と告げられ、ホテルに帰されました。
アンナを部屋まで見送った後、デーニンとポール大公は二人で相談します。
ポール大公は、皇太后の屋敷で居候のしている為、お金に困っていました。二人の利害は一致して、ポール大公は皇太后を説得することに、同意しました。
デーニンが部屋に戻ると、脱ぎ捨てた帽子や、上着、靴などが点々とアンナの寝室まで続いていました。デーニンが自分の寝室に入ろうとすると、アンナが声をかけてきます。
カメラは夜景の見える広間を映しています。その広間を挟んで、二人の寝室から声のやり取りだけのシーンが続きます。
「将軍。おなか減った」
「さっき食事をしたろ」
「出されたのは、シャンパンだけ。明日もう一度行きたい」
「酔っている」
「全然だわ。ねえ、もっと飲みたい」
「だめだ」
「まあ・・・。一人で退屈でしょ。私の部屋に大勢集まっているわ。一緒にどう?」
「いいかげんに寝ろ」
「ねえ、告白するわ。本当はここには私だけよ。聞こえた?。あなたも何か”自白”しなさい」
あきれ果てたデーニンが部屋に行ってみると、アンナは酔いつぶれて眠っていました。部屋の明かりを消し、扉を閉めてそっと出て行くデーニン。
この場面を見て、はるか昔にこの映画を見たことがあると、思い出しました。
ポール大公の斡旋は失敗しましたが、アンナに興味を持った皇太后は、お忍びでアンナの泊まっているホテルを訪ねます。
この映画の一番の見所です。
皇太后役のヘレン・ヘイズの演技が光ります。
最初一目でアンナが皇女アナスタシアに似ていることを認めましたが、その後、目をそらしてアンナの訴えをことごとく退けます。
もうこれ以上、偽物のアナスタシアに騙されたくない思いと、10年間行方不明の孫娘に会いたいとの思いに挟まれた皇太后の複雑な心の内を、常に胸を張った姿勢で椅子に座ったまま、顔の表情と目の動きだけで演じ切っています。
いくら哀願しても全てはねつけられたアンナは、ある仕草をします。この仕草が何であるかは、映画を見てください。
この仕草が、怖がっていた時に見せる孫娘アナスタシア特有の癖と同じてあることから、皇太后はアンナを皇女アナスタシアと認めました。
抱き合って喜ぶ二人でしたが、今まで散々騙されて辛い目にあった皇太后は、最後にこう言います。
「万が一、本人でないとしても、私には黙ってて」
夢の再会から3週間後、パリで長い間、行方不明だったアナスタシア皇女のお披露目と、皇女とポール大公との婚約発表を兼ねて舞踏会が行われることになりました。
舞踏会の前に行われた記者会見の後で、久しぶりに会った二人は声を交わします。
「久しぶりね」
「誰かに会うのを止められたのか」
「私が会うまいと決めたの」
「では結婚か」
「10年来の婚約者だし」
「金目当ての男と結婚するのか」
「ポールを私に押し付けたのは、あなたよ。お金が取れなくなると心配」
「お金なんかどうでもいい。自分が誰か知りたいだけだと言ったのは、誰だ」
「私はこれで満足よ」
「君の金だけを愛している男と、結婚するがいいさ」
という具合になって、けんか別れになってしまいます。
式典の前に行われた舞踏会でアンナは、ポール大公が一人の女としてのアンナより、ロマノフ王朝の遺産相続人であるアナスタシア皇女を愛していることを知ってしまいました。
二人がワルツを踊るのを見て、ボーニンは控えの間にいる皇太后に別れを告げに行きます。
皇太后から
「驚いたわね、今日一番の立役者なのに。孫娘をそのあるべき地位に戻した上に、ボールとの縁結びも。でも、なぜか喜んでいないね、なぜかを言ってごらん」
と聞かれて、デーニンは
「婚約が皇女の本意なら喜ぶべきかと、本心は別でも」
「なぜそれを私にほのめかしたりせずに、孫娘に直接言わない。」
「他人には簡単に思えることが、私には難しいのです。」
「悪党ではないと分かったが、愚か者だね。ここで待っていなさい。」
と言って、緑の間にデーニンを待たせたまま、から自室に戻った皇太后のところに、ポール大公と踊っていたアンナが戻ってきました。なぜか元気がありません。
「ポールを愛している?」
との皇太后の問いに、アンナはしばらく迷ってから答えました。
「好きですわ」
「口ごもって。愛していないのでは・・・。婚約発表にためらいは?本当はポールとの結婚を望んでいないのでは。」
「分かりません」
「ほかの人を愛しているんだよ。私は年寄りよ。でもお前の未来は長い。本当の自分に戻って、幸せにおなり」
と言って、皇太后は髪飾りをアンナに渡し、緑の間でそれを付けるように言います。
式典の直前になってアンナとボーニンがいないことに気づき、大騒ぎになります。婚約発表直前になって、二人は駆け落ちしたのです。
皇太后は慌てず、ポール大公の腕をとって会場に向かいます。
ポール大公が訪ねます。
「皆になんと告げるつもりですか。」
「簡単よ。『お芝居は終わった。お帰り』と。」
ここで映画は終了します。
おまけ
DVDを見ていて気が付いたのですが、字幕に大きな間違いが2ヵ所ありました、しかも同じ間違いです。
同じくアナスタシア伝説をもとに作られたアニメ映画があります。
詳しくはこちら ↓
この映画の背景になったロシア革命後の内戦の解説はこちら ↓
ろし
このサイトで取り扱っている映画は、DMMの宅配DVDレンタルで借りられます。このサイトをご覧くださっている皆様へ
DMMに入会すると、希望するタイトル(あらかじめリストに登録しておきます)が2枚づつ封筒に入れて、郵送されてきます。返却は同じ封筒に入れて郵便ポストに投函するだけです。
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