なぜ戦争が始まるのか 

映画からその訳を探ってみようby亀仙人2世

映画 「1917 命をかけた伝令」味方の大隊がドイツ軍の仕掛けた罠にはまったことを知らせるため、二人の伝令兵が前線に向かって走るのだが。

time 2021/03/12

映画 「1917 命をかけた伝令」味方の大隊がドイツ軍の仕掛けた罠にはまったことを知らせるため、二人の伝令兵が前線に向かって走るのだが。

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亀仙人2

映画 「1917 命をかけた伝令」

2019年         製作 イギリス・アメリカ

味方の連隊が、ドイツ軍の仕掛けた罠にはまったことを知らせるため、二人の伝令兵が前線に向いました。しかし、前線では攻撃開始の時間が刻々と、迫っていました。

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監督 サム・メンデス
脚本 サム・メンデス
クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
製作 サム・メンデス
ピッパ・ハリス
カラム・マクドゥガル
ブライアン・オリヴァー
製作総指揮 ジェブ・ブロディ
Ricardo Marco Budé
イグナシオ・サラザール=シンプソン
出演者 ジョージ・マッケイ
ディーン=チャールズ・チャップマン
マーク・ストロング
アンドリュー・スコット
リチャード・マッデン
クレア・デュバーク
コリン・ファース
ベネディクト・カンバーバッチ

映画の解説とあらすじ(例によってネタバレあり)

この映画は、監督の サム・メンデスが祖父から聞いた話をもとに作られました。監督の祖父アルフレッド・H・メンデスは伝令として、1917年から西部戦線で伝令として、軍務に服していました。

この映画の特徴は、全編がワンカットに見えるように編集して、見ている人が常に主人公と一緒に行動している気分にさせるようにしています。

1914年から始まった第1次世界大戦は、機関銃や毒ガスなどの最新兵器に対して、昔ながらの突撃を繰り返していたため、両軍に多くの死傷者が出てしまいます。

1916年からドイツ軍の指揮を引き継いだルーデンドルフは、犠牲者を少なくするため、1916年9月から後方にヒンデンブルク線と呼ばれる強固な要塞群を築き、この映画の日付の前日1917年4月5日に、全軍の撤収を完了しました。

ヒンデンブルク線に後退するドイツ軍を追って、クロワジルの森に駐屯しているいたデヴォンシャー連隊は、4月6日朝、ドイツ軍に対する総攻撃を開始する予定を立てていました。

航空偵察で、ドイツ軍の守りが固いことを知ったエリンモア将軍は、電話線がドイツ軍によって切断されたため、トムとウィルを呼び、1600名が居るデヴォンシャー連隊のマッケンジー大佐に、攻撃中止の命令を伝えるよう命令しました。

 

トムが呼ばれたのは、デヴォンシャー連隊に、トムの兄ジョセフ・ブレイクが中尉として勤めていたためでした。ウィルはトムが呼び出された時、たまたま、そばに居ただけです。

兄の身を案じたトムは、夜まで待とうというウィルの忠告を無視して、急いで出発しました。

当時の状況①

映画の舞台となった1917年4月6日、アラス付近の西部戦線の状況です。

 

1917年初期、ドイツ軍撤退の様子を記した地図。

出典 Wipedia  commons

黒い線がイギリス軍の前線。左上から右の黒線まで後退するドイツ軍を追って進軍しました。

赤い線は、前年の9月から築き始めたドイツ軍の最終防御線「ヒンデンブルク・ライン」。

一番右の線は、映画の設定となった1917年7月6日の4日前の4月 2日です。映画の中で、Y連隊の半数がやられたと言っているのが7月4日の夜で、ドイツ軍はこの戦いの翌日、4月5日にヒンデンブルク線に撤退するアルベリッヒ作戦を完了し、イギリス軍を迎え撃つ準備を整えました。

緑の楕円で囲った部分が、二人が向かったデヴォンシャー連隊のいる「クロワジルの森」です。

映画の会話でエリンモア将軍のいる司令部から、クロワジルの森近くにあるドイツ軍の塹壕線(ヒンデンブルグ線)まで南東に14.5km離れていることから、この司令部は、アラス付近のイギリス軍の前線と、ヒンデンブルク線が接近している場所にあったと思われます。

主人公の二人はアラスからクロワジルの森にいるデヴォンシャー連隊に、攻撃中止命令を伝えに行きました。

 

二人は教わった通り、塹壕を伝わって最前線にいるY連隊に行き着きました。

その途中、ウィルは死体を詰めた土嚢を踏んで、怒られてしまいます。その血だらけの土嚢は土ではなく、砲撃を受けてバラバラになった軍曹の死体を入れたものでした。

Y連隊は、二人が到着する2日前の夜ドイツ軍と戦い、指揮官のスティーヴンソン少佐を始め、連隊の約半数を失う大損害を受けていました。

スティーヴンソン少佐の後を継いだレスリー少尉は、二人に無人地帯を抜ける道を教えました。それは馬が死んでいる場所の近くで、最初の鉄条網を抜け、さらに鉄条網に引っかかている死体のそばで、2つ目の鉄条網に空いた穴を通り、後は腐乱した死体の匂いを頼りに行けば、ドイツ軍の塹壕に着くという、凄まじい道です。

ドイツ軍が撤退したことを信じられないレスリー中尉は、「無事通り抜けたらこれを撃て」と言って、信号弾をトムに渡しました。

第一次世界大戦時のドイツ軍の塹壕線。左上はイギリス軍の塹壕線。その間はノーマンズランドと呼ばれる無人地帯。1917年8月。

白い点々は、砲撃でできた穴

出典 ウィキペディア

イギリス側の鉄条網からドイツ軍の塹壕までの道は、腐乱した兵士や馬が散乱しており、中には白骨化した死体もあります。砲弾が爆発してできた穴には、水がたまり、その中にも多くの死体が浮かんでいます。ここで動いているものは、死体をむさぼるネズミとカラスだけです。

ドイツ軍の塹壕

左から無人地帯、第1線、第2線、最終線と塹壕が続き、それぞれの塹壕には敵の砲撃を避けるために地下深く掘られた退避壕があります。この点が、塹壕の壁の横に退避壕を作ったイギリスと、違うところです。そして一番後ろの離れたところに、砲兵隊の陣地があります。

出典 Wikipedia commons

二人は、散乱する死体の間の間を通り抜け、ドイツ軍の塹壕に到着します。ドイツ軍の塹壕はコンクリート等を使いしっかりと作られています。しかし、所々破壊され通り抜け出来なくなっていたため、二人は地下へと続く入り口を見つけ、中に入りました。

途中ブービートラップ(罠)による爆破に逢いましたが、地下通路を通ってドイツ軍の最後部にある、無人の砲兵陣地に着きました。退却する時大砲を運べなかったのか、破壊された大砲が多く残されていました。ここでトムは信号弾を上げ、無事通り抜けられたことを、イギリスの最前線に知らせます。

ドイツ軍の塹壕を後にしてさらに進み、二人はドイツ軍によって、破壊された農場に着きました。

水筒が空になっていたウィルは、バケツに残っていた乳牛の乳を見つけ水筒に入れました。これはドイツ軍が撤退する時、井戸に毒を入れた恐れがあるためです。

二人が休んで居た場所に、空中戦で敗れたドイツ軍戦闘機が墜落してきました。二人は急いでドイツ軍のパイロットを助けましたが、一瞬のツキを突かれ、トムはナイフで刺され死んでしまいます。

ウィルが呆然としている時、トラックで移動中のイギリス軍部隊が通りかかり、クロワジルの森の近くにある町エクーストまで、送ってもらうことになりました。

エクーストの町に続く橋が破壊されていた為、トラックは迂回し、ウィルはここで別れて壊された橋を渡り始めました。ウィルが橋を渡っている時、近くの二階家から、銃撃を受けました。ウィルは川を渡り土手に隠れて撃ち返しながら、二階建て家の中に入ります。

静かに階段を上がり、2階にある部屋に入る扉を開けると、負傷したドイツ兵が撃ってきました。ウィルは階段を転げ落ち、気絶して気を失い意識が暗くなっていきます。

ここで初めて大きなカットに入ります。ここまでカメラは動き続ける主人公に寄り添うかたちで、長回しで撮り続けています。(実際は分からないように、カットを入れています。)

 

ウィルが気が付いたとき、あたりが暗くなっていました。彼は時々照明弾が上がる中、残骸となった街に入って行きます。

ドイツ兵に見つかった彼は急いで逃げ、そばにあった地下室への入り口を蹴破って、身を隠します。

中にはフランス女性が、途中で拾ってきた赤ん坊と一緒に隠れていました。女性はこの町がエクーストであることを告げ、目的地のクロワジルの森は街外れの川に沿って下ったところにあると、教えてくれました。

ウィルは二人のために支給された食べ物と、ミルクの入った水筒を渡し、再び外に出ます。

外に出たウィルは、またドイツ兵に見つかり、懸命に逃げて街外れの川に飛び込みました。

急流に飲み込まれた彼は、身に着けた装備を外し、流木に掴まって下流に流されていきます。

大きな倒木が川をせき止めるようにしているところで、流れ着いている人々の死体をかき分け、ウィルは岸に上がりました。

かすかに聞こえる歌声を頼りに進んでいくと、大勢の兵士が歌っている兵士を囲んで、歌を聞いている場所に着きました。

この時の歌は「 I Am a Poor Wayfaring Stranger(私は貧しきさまよえる旅人)」で、You Tubeのユニバーサル・ピクチャーズの公式ビデオで聞くことが出来ます。

この兵士たちは、探していたデヴォンシャー連隊の中のD中隊の人たちでした。

直ぐに攻撃が始まると聞いたウィルは、急ぎマッケンジー大佐を探しに最前線に向かいました。その途中で第1波の攻撃が始まり、ドイツ軍の砲弾が炸裂する中、突撃する兵士に何度もぶつかり、転がるようにして、大佐のいる指揮所にたどり着きました。

砲弾が炸裂する中、突撃する兵士をかき分け、走り続けるウィルを撮ったノーカットの長い場面は、この映画一番の見所です。

将軍からの命令書を読んだ大佐は、攻撃停止を命じましたが、第1波の突撃を開始した兵士たちの中に多くの死傷者が出てしまいました。

その中に亡くなったトムの兄ブレイク中尉が居ることを知ったウィルは、後方に設けられた負傷者選別所に向かいました。

負傷者選別所に着くと、ブレイク中尉は、次々と負傷者を連れてくる兵士たちに行き先を指示していました。

ウィルはトムがはめていた指輪と認識票をブレイク中尉に渡し、すべての役目を終わりました。

疲れ切ったウィルは傍にあった木に寄りかかり、昇り始めた朝日を浴びながら家族の写真を取り出します。妻からの写真の裏には「無事帰って来て」と書かれていました。

 

イギリス軍はこの映画の2日後の4月9日、ドイツ軍に対して大規模な攻撃(アラスの戦いとヴィミ―リッジの戦い)を仕掛けましたが、16万人の犠牲者を出し、ドイツ軍に撃退されてしまいます。

その1週間後の4月16日、今度はフランス軍がドイツを攻撃しましたが、今度もドイツ軍に守り切られてしまいました。18万7千人もの犠牲者を出しながら攻撃に失敗したフランス兵達は、無能な上官に対して反乱を起こし、攻撃命令に従うことを拒否するようになりました。

この2つの作戦でドイツ軍が受けた損害は、16万3千人でした。

この戦いの詳しい解説は、こちらにあります ↓

第一次世界大戦。1917年 「ニヴェル攻勢」 新しく司令官となったフランスのニヴェルは、「勝利の秘密を知っている」と言って、ドイツに対して大攻勢を仕掛けます。

映画の主人公にと一体になり、息つく間もなく次々と起こる事件に巻き込まれ、緊張のうちに見終わってしまいました。

派手な場面の裏にある、兵士の死体や破壊された街を通して、戦争の悲惨さと無意味を教えてくれる、良い映画です。

 

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