なぜ戦争が始まるのか 

映画からその訳を探ってみようby亀仙人2世

映画 『フォーリングマン』9.11で燃えるビルの上から飛び降りた人は何を伝えたか?

time 2017/10/17

映画 『フォーリングマン』9.11で燃えるビルの上から飛び降りた人は何を伝えたか?

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亀仙人2

映画 フォーリングマン

2006年 イギリス

その時、彼らは何を見たか
ワールド・トレード・センターに飛行機がぶつかった階より上にいた人たちは、逃げ場がなく、窓から身を乗り出して布などを振って助けを求めていました。そのうち何人かは落ちたり、自ら飛び降りたりして死んでしまいました。この映画は、そのうちの1枚の写真にまつわる物語です。

監督 ヘンリー・シンガー

あらすじと感想

9.11アメリカ同時多発テロの事件が報道されたとき、2つの映像が強く心に残りました。1つはビルから転落する人。もう一つは炎に追われて、高層ビルの窓から身を乗り出して必死に布を振り、助けを求めている人たちです。

この2つの映像はすぐに姿を消し、長らく見ることはできませんでした。映画「フォーリングマン」が公開され、再び見ることが出来ましたが、あまりにも衝撃的な映像のため、私自身の「できたら、見たくない映画」として、しまっておきました。

このブログを書くため改めてDVDを借りて見ましたが、やはり見るのがつらい映画でした。ホラー映画などでもかなり残酷なシーンがありますが、それらは作り事であるので割と平気で見ていられます。しかし、この映画の映像はすべて現実に起こったものです。それがこの映画を見ることを、辛くさせています。

最初にビルの上部に取り残された人たちが、家族と連絡を取り合っている場面が出ます。はじめは連絡が取れたことで、無事だと思っていますが話しているうちにどんどん状況が悪くなり、最後は家族に別れを告げて切れてしまいます。驚くのは、最後まで冷静にやり取りをしていたことでした。

ワールド・トレード・センターの高層階に取り残された人たちは、炎と有毒な煙に追われて窓から身を乗り出し、助けを求めます。そのうち何人かは自らビルから飛び降りました。最上階に在ったレストラン「ウィンドウズ」の総料理長だったロモナコは、同じ店の仲間が助けを持てめているのを見て心を痛めます。様子は取材中のカメラマン、リチャード・ドルーによって克明に写されました。

やがて第一ビルは崩壊し、AP通信社に戻ったカメラマンリチャード・ドルーは撮ってきた写真を調べていました。編集主任と一緒に取材した写真を見ていた彼は、「フォーリングマン」と名付けられた男性が飛び降りている途中を映した、一枚の写真に惹きつけられ、この写真は全世界に配信されました。

出典 national  geographic

この写真に目を付けたのはアメリカの地方紙の一つ、モーニング・コール紙でした。モーニングコール紙は、翌日の朝刊にこの写真を大きく掲載しました。

モーニングコール紙に掲載された写真

翌日、モーニングコール社は、読者からの非難の嵐に巻き込まれます。
この辺りは映画を見てください。

同じような論争はアメリカ各地でも起きました。それは自殺者を扱った映像が衝撃的であるばかりではなく、キリスト教では、自分で自分の命を絶つ行為は、殺人と同じ大きな罪でありこれを犯した者は地獄に落ちるとされているからです。なぜなら、生命は神からの賜物であって、人間がそれを神の御旨に反して絶つことは許されないとしている為です。

これらに影響され、報道機関各社は自主規制で、ビルから飛び降りた人の映像を掲載することをやめました。

一方、不眠不休で犠牲者の捜索に当たるレスキュー隊員達は、9.11の英雄として連日テレビや新聞などで報道され続けました。彼らはどんな悲惨な状況からでも蘇る、不屈の魂を持ったアメリカ人の代表として扱われました。

でも中には、「フォーリングマン]の写真に惹きつけられた人もいました。作家のトム・ジュノーもその一人です。彼はニューヨークの検視局に電話して、あの日何人の人がビルから飛び降りたか尋ねました。検視局の答えはこうです。

「飛び降りた人はいません。彼ら爆風で吹き飛ばされただけです。自分から飛び降りた人など、一人もいません」

この答えを受けたジュノーは、おかしなことになっていると思いました。皆であの日ビルから飛び降り自殺した人を、無かったものとして覆い隠そうとしているのです。これではいけないとして、彼は活動を開始します。

カナダ人の新聞記者ピーター・チェイニーも、編集主幹から「フォーリングマン」の身元を調べて記事にするよう、命じられました。彼は不可能と思いましたが、手を付けることにしました。ピーターはまず「フォーリングマン」の写真を拡大してみました。そしてフォーリングマンの肌の色が濃いこと、顎髭があり、白い上着と黒いズボンをつけ、特徴のある靴を履いていることに気が付きました。彼は「フォーリングマン」は黒人かヒスパニック系のレストランのウェイターと思い、かってビルの最上階にあったレストラン「ウィンドウズ」の従業員ではないかと見当をつけます。

数千人の人々が、あの日亡くなった人を探していました。ピーターもその人たちと共に「フォーリングマン」の行方を探しましたが、まるっきり手掛かりを得られませんでした。途方に暮れたある日、壁に貼られたぼすーに顎髭を生やし、白いシャツを着た「フォーリングマン」にそっくりな男性の写真が目に入ります。

後で人違いだと分かりますが、男性の名前はノルベルト・ヘルナンデス、ポスターを張ったのは姉のミラグロスでした。ピーターは、早速ミラグロスの元へ取材に訪れます。

ミラグロスは、彼をちょうど行われていたノルベルトの葬儀に連れて行きます。しかしノルベルトの家族は、彼に対して激怒します。

その訳は、ノルベルトが自殺したと認めることによって、彼が最後まで家族のために生きようとしていたと信じている家族の思いを、断ち切ることになるからです。

もう一つは、このブログの初めの方に赤い文字で書いた通り、自殺は神の教えに反する大きな罪であり、場合によっては自殺した者は地獄に落ちることがあると、信じられていることです。残された家族にとって、良き夫であり父親でもあったノルベルトが地獄に落ちるなどと、は考えたくもありませんでした。

しかし、ピーターは「フォーリングマン」はノルベルト・ヘルナンデスであると記事に書きます。この記事は瞬く間に世界に広まり、ヘルナンデス一家は、今まで居たところに居られなくなり、転居しました。また父親が自殺したかもしれないと思った末娘のタティアナ・ヘルナンデス夜も眠れなくなり、度々父親の幽霊を見るなどして精神を病んでしまいます。

記者のピーター・チェイニーは、残された家族に対する思いやりにかけていたと言わざるを得ません。

「フォーリングマン」の実名が報道されたことに対して、ノルベルトの元上司、レストラン「ウィンドウズ」の総料理長だったロモナコは、反対の立場でした。彼はこう言っています。

「身元を調べたって、それが何になります。”フォーリングマン”の名前が分かったって何も変わりません。あの事件が悲劇を生んだことは、すでに写真に表れています。」

別の方面から「フォーリングマン」にアタックしている作家のジュノーは、こう考えていました。
「目を背けたくなるような死に方をしたと言って、ワールド・トレード・センターから飛び降りた人々の写真を排斥すべきではありません。”フォーリングマン”を9.11の恐怖の象徴として、たいせつにし、直視すべきだ」

「フォーリングマン」を調べているジュノーはこの写真が連続した12枚のうちの1枚であることを知ります。彼は「フォーリングマン」を撮ったカメラマンのドルーに会い、12枚の写真を見せてもらいました。

そこに映っていたのは、死を受け入れて静かに落ちていく人ではなく、もがきながら落ちていく、痩せて長身の1人の黒人の姿でした。そして落ちていく途中上着が風によってめくれ、下にオレンジ色のTシャツを着ているのが分かりました。その姿を見たジュノーは「フォーリングマン」はヘルナンデスではなく、別人だと考え12枚の写真を持って、ヘルナンデスの家族に会いに行きます。

奥さんのユルヒアに話を聞いたところ、当日の服装はジーンズに青い模様の入ったシャツを着て出かけ、オレンジ色のTシャツは着ていなかったことで、別人だと分かりました。他の家族もこの連続写真を見て、この写真の人物は父ではないと言います。

それまでノルベルト・ヘルナンデスが自殺して地獄に行くのではないかと恐れていた家族は、気持ちが楽になり再び明るさを取り戻しました。そして別れ際にこのことをぜひ公表してほしいと、ジュノーに頼みました。

ジュノーは再び「フォーリングマン」は誰か、調べ始めます。12枚の写真を元ウィンドウズの従業員たちに見せますが、全員誰だかわからないと言います。総料理長のロモナコのところにも行きましたが、彼は写真を見るのを拒否しました。

写真を見直していてジュノーは、大変なことに気が付きます。ウィンドウズで働いていたウェイターたちは、写真のような黒ズボンではなく白黒チェックのズボンをはいていました。もちろんウィンドウズでコックをしていたヘルナンデスも、黒ズボンではありませんでした。調査は完全に暗礁に乗り上げてしまいます。

そこに助け舟を出したのが総料理長のロモナコでした。「フォーリングマン」がウィンドウズの従業員ではないと知った彼は写真を見ることに同意したのです。

彼はしばらくじっと写真に見入っていましたが、レストラン専属の音響エンジニア
ジョナサン・ブライリーに似ていると言いました。背格好や肌の色などがどれも当てはまったのです。

ジュノーはブライリーの家族に連絡しました。ブライリーの父親は牧師をしていました。彼は信者の手前、息子が自殺したことを認めるわけにはいかないと言い、代わりにジョナサンの姉グウェリンドンを紹介してくれました。オレンジ色のTシャツも弟の
ティモシーが覚えていました。しょっちゅう着ていたのでからかったそうです。

彼女は言います。

「”フォーリングマン”が弟だとは考えません。あの瞬間、自らの手で人生に終止符を打った、大勢の中の一人だと思っています。彼が誰かだと探るよりも、人間とは何かを感じるべきです。」

結局「フォーリングマン」がブライリーだとの確証は得られませんでした。「フォーリングマン」は無名のままです。

でも、それ以上に大切なことをこの写真は語っています。
この写真があることで、9.11の悲劇を後世の人たちに伝えることが出来るのです。

最後に取材にあたった作家のジュノーは、こう言っています。

「私が”フォーリングマン”の意味を見極めたいと思ったのも、9.11の本質を理解したかったからです。そのためには恐ろしい映像も直視する必要がありました。あのような悲劇が起こってしまった以上、我々はその事実を覆い隠すようなことをせず、は真摯に向き合うしかありません。」

これから後に、ビルから落ちた人の写真を載せておきます。見る、見ないはあなたにおまかせします。

出典 imgcc.naver.jp

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9.11を前にしてCIA とFBIはアルカイダのメンバーが、アメリカでテロを行うことを把握していました。ではなぜ防げなかったのでしょう。

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