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亀仙人2映画 「つばさ」
1927年 アメリカ
第1次世界大戦で、戦闘機パイロットとして活躍したウィリアムA.ウェルマンが監督が製作したアメリカの戦争映画です。製作時にはトーキーが確立していなかったためサイレント(無声映画)となっていますが、実機を使った空中撮影は見所があります。
シリアスな戦争映画ですが、肉体派の女優クララボウが加わったことで、ラブコメディー的な要素も加わりました。
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監督
ウィリアム・A・ウェルマン
脚本
ホープ・ロアリング
ルイス・D・ライトン
原作
ジョン・モンク・サウンダース
製作
ルーシャンハバードアドルフズコール
ジェシーL.ラスキー
B.P. シュールバーグ
オットーヘルマンカーン
撮影
ハリー・ペリー
出演者
クララ・ボウ
チャールズ・ロジャース
リチャード・アーレン
ジョビナ・ラルストン
ゲイリー・クーパー
解説
1920年代中頃からアメリカでは、第1次世界大戦で活躍したパイロットたちが全米各地で遊覧飛行や曲技飛行、アメリカ横断飛行などで活躍し民間に飛行機熱が高まりました。そこでパラマウントは第1次世界大戦でパイロットとして経験のある人たちを集め、空中戦を主体とした映画を作ることにしました。
原作者のジョン・モンク・サウンダースは、米国陸軍航空隊航空学校の出身で戦後は新聞記者を経て作家になりパラマウントに出入りしていた関係で採用されました。
監督のウィリアム・A・ウェルマンは他にパイロットの経験がある監督が居なかったため採用されたのですが、彼はアメリカが参戦する以前から義勇兵としてフランス空軍の中にある外人部隊「ラファイエット飛行隊」の一員として活躍していました。
ニューポール24戦闘機の前に立つウェルマン。1917年
出典 Wikipedia
撮影のハリー・ペリーもパイロットで、航空撮影に豊かな経験があります。彼は空中戦で21台のカメラを回し撮影しました。クーロズアップの部分では、役者自身がカメラを回しながら操縦していました。
俳優のリチャード・アーレンも戦時中パイロットとして働いていました。もう一人の主役のチャールズ・ロジャースも飛行訓練を受け、実際に空を飛んでいます。
撮影に当たってウェルマン監督は300人もの元パイロットを雇い、さらにアメリカ陸軍航空隊の助けも借りました。
ウェルマン監督のこだわりは飛行中の戦闘機を撮影する時、必ず動かない雲や地面を背景に入れ、スピード感を表現したことです。
ただ残念なのは空中戦の撮影において、より実際に近い形で撮影したのにもかかわらず、撮影に使用した飛行機は、第1次世界大戦後アメリカ陸軍航空隊で使用されていた飛行機でした。
アメリカの戦闘機として撮影に使用されたトーマス・モースMB-3
ドイツ側の戦闘機はカーチスP-1ホークが使用されました。
この映画が公開されたのは1927年8月12日でしたが、同年の5月21日チャールズ・リンドバーグが大西洋単独無着陸飛行を成功させたこともあり、大ヒットしました。
映画の主役を務めた新人のチャールズ・ロジャースとリチャード・アーレンは一躍有名になり、この後多くの映画に出演して、スターの仲間入りをしました。
映画「つばさ」は1997年、米国連邦議会図書館のアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録されました。
あらすじ(ネタバレあり、ついでに突っ込みどころも)
アメリカの小さな町に住む飛行機好きの青年ジャック・パウエル(チャールズ・ロジャース)は都会から来たシルヴィア・ルウィス(ジョビナ・ラルストン)に夢中になり、隣に住むお転婆娘のメリー・プレストン(クララ・ボウ)が、想いを寄せていることに気が付きませんでした。
↑ジャックとメリー、ジャックの車に書かれた流星マークが少し見えます。
↑シルビアとディビッド
しかし、シルビアは地元の名家で資産家の一人息子ディビッド・アームストロング(リチャード・アーレン)と、恋人同士の中でした。
1917年アメリカ参戦が決まり、ジャックとディビッドは共に飛行隊に志願しました。
別れの為シルビアのもとに訪れたジャックは、テーブルの上に置かれたシルビアの写真の入った小さなペンダントを見つけ、自分のために用意してくれたものだと思い、持ち帰ってしまいました。
しかし、それはシルビアがディビッドのために用意したもので、写真の裏には大切な言葉が書かれていました。
ペンダントに入れた写真の裏に書かれた言葉
後でこの写真がもとで、大変なことになってしまいます。
入隊後の二人は、シルビアの恋敵同士ということで、互いに憎み合っていました。
しかしボクシングの訓練で、本気で殴り合った結果、お互いに認め合い仲直りしました。
↑ 訓練のボクシングで、殴り合いする二人
二人が地上訓練を受けている間、故郷ではメリーが婦人自動車部隊が設立されたことを知り、応募します。
いよいよ飛行訓練が始まり、飛行基地に移ります。二人の宿舎となったテントには、一足先に来て訓練を受けていたホワイト(ゲーリー・クーパー)が居ました。
↑ ホワイトに挨拶する二人
ホワイトは
「これから8の字飛行の訓練だ」
と言って。チョコレートを一口噛って出かけます。残りのチョコレートは無事帰って来たら食べるつもりでした。
しばらくすると、訓練中の飛行機同士が衝突事故をおこし、そとは大騒ぎになりました。二人は『何があっても外に出るなと』の命令を守り、テントで待機します。
やがて『ホワイトの荷物を司令部に移すから、まとめておくように』との指令が届きます。
↑ 食べかけのチョコレート
整理の途中食べかけのチョコレートを見た二人は、悲しみに暮れてしまいます。
二人の初飛行の番になり、滑走路に着いたとき一台の救急車がやって来ました。降りてきたのは、死んだと思っていたホワイトでした。彼は新人二人の様子を見に来たのです。
↑ 救急車によりかかって二人を見ている、ホワイト
「つばさ」の解説記事で、ホワイトはこの時死んでしまったと書いている人が多いですが(英語版のウィキペディアもそうです)、生きてますからね。映画よく見てね。
たったこれだけの出番ですが、後の大スターの片鱗を見せています。
第1次世界大戦の映画でゲーリー・クーパーが主役を務めた作品
↑ この映画でゲーリー・クーパーはアカデミー主演男優賞を獲得しました。
戦争は激しさを増し、訓練を終えた二人はフランスにあるアメリカ軍の飛行場に配置されます。
↑ ジャックは自分の機体に流星マークを書いてもらいました。
ここでの初飛行の際、ドイツ軍のエースパイロット、ケラーマン大尉の率いるフライイング・サーカスの部隊に出会ってしまいます。
ジャックは撃墜されてしまいましたが、地上にいたイギリス軍に助けられました。
ディビッドはケラーマン大尉に追い詰められ危ない所でしたが、ケラーマン大尉はディビッドの機銃が故障しているのを見ると、翼を翻して離れていきました。
ここで面白いのを見つけてしまいました。日本語の字幕で上空3万3千キロと書いてありますが、現代でもこんな高さで飛べる飛行機はありません(高度100kmから先は宇宙空間になります)。英語の字幕では1万フィート(約3000m)となっています。
もう一つ、字幕の間違い
これはひど過ぎます。ジャックを助けたイギリス軍の隊長の言葉です。誰が助かったお祝いに飴玉(drop)を舐めますか。「a wee drop」は「軽く一杯」の意味です。
数週間たつと、彼らも一人前の飛行士となりました。
同じころメリーも婦人自動車部隊の一員として、アメリカ軍の駐屯地をまわり、インフルエンザ(スペイン風邪)の薬を届ける仕事をしていました。
↑ トラックを運転しているメリー
彼女がメルベールの村に着いたとき、ドイツ軍のゴータ爆撃機の爆撃にあってしまいました。この時、駆けつけてゴータ爆撃機を撃墜した2機のアメリカ機を操縦していたのが、ジャックとディビッドでした。
メリーはジャックの機体に描かれた流星のマークを見て、大喜びします。
二人は、ゴータ爆撃機を撃墜した功績でフランス政府から勲章を授けられ、休暇をもらってパリへ遊びに行きました。
しかし、連合国側はドイツに対して大反撃(Big Push)を決め、アメリカ軍は休暇中の飛行兵を急いでを呼び戻すため、パリにいる憲兵に探させました。
丁度パリにいたメリーは、レストラン前の人だかりを覗いてみると、窓に大きく流星のマークが書かれていました。
ジャックが居ると思って憲兵に話を聞くと、「ジャック・パウエルはこの店で水兵や給仕と派手な喧嘩をやらかし、そのあと、どっかの酒場に行ったみたいだ」とのことでした。
メリーがジャックを酒場で見つけた時には、彼は酩酊状態で酒場の女たちと戯れていました。
英語版のウィキペディアによると、撮影時、彼は本当に酔っぱらっていたそうです。
メリーは、ジャックをホテルの一室に連れ込みましたが、憲兵に見つかり、本国へ返されてしまいました。
鏡に映ったメリー。後ろは部屋に入った来た憲兵たち。
この状態で緊急招集されたジャックと一緒にいるところを見つかったら、強制送還されるのも当然だよな。
連合軍の大反撃(Big Push)が始まる前日、隊にも戻ったジャックとディビットは、ドイツ軍陣地の上空に浮かんでいる偵察気球の破壊を命じられました。
だがこの飛行前に、二人の間にひと悶着ありました。
それは、ジャックがお守りにしていたシルビアの写真をディビットに見せようとしたとき、ペンダントの蓋が開いて写真が落ちてしまったのです。
写真を拾ったディビットは、写真の裏に「ディビットへ、愛をこめて、シルビアより」と書いてあるのを見て、ジャックをガッカリさせまいとして、写真を破り捨ててしまいました。それ以来、二人は仲が悪くなってしまいました。
常に前だけを見て飛んでいるジャック。後ろはディビットの飛行機。
それに反して、ディビットは前に飛びながらも、周りの様子を気にしています。
このあたりは実戦経験のある、ディビット役のリチャード・アーレンですね。
ディビットは気球を攻撃しているジャックを守るため、4機のドイツ機と戦い2機を撃墜しましたが、自分も打たれてドイツ領内を流れるマッド河に落ちてしまいました。
偵察気球を攻撃するジャック
彼は肩を撃ち抜かれていましたが、何とか岸に泳ぎ着くことが出来ました。
基地に帰ったジャックは、一晩中ディビットの帰りを祈り待っていました。夜明け前一機のドイツ機が飛んできて、通信文を落としていきます。その通信文にはこう書かれていました。
『一機の戦闘機が墜落した。飛行士は捕虜になるのを拒み死亡した。ケラーマン』
ドイツのエースパイロット、ケラーマンが落とした通信文。ケラーマンは以前機関銃が故障した時のディビットを、見逃してあげたパイロットです。
夜明けとともにアメリカ軍による一斉攻撃が始まり、ジャックもディビットの仇をとるため飛び立ちます。
この戦いはアメリカ軍が行ったサンミッシェル(サンミエル)の戦い(1918年9月12日~15日)をもとにしています。
中央の赤い点線で囲まれた部分が、サンミッシェルの戦いの地域
ディビットが墜落したマッド河は、戦場からドイツの都市メッツに向かって流れている川です。
この映画でたくさん出てくる、小さくてかわいい戦車は、フランス製のルノーFT-17戦車です。
この戦車隊を指揮していたのが、第2次世界大戦の「パットン戦車軍団」で有名になった、ジョージ・S・パットンでした。
この時アメリカの第304戦車旅団を率いていた、ジョージ・S・パットン
出典 Military.com
この戦いの詳しい説明はこちらにあります。↓
地上にいる歩兵を助けながら戦っていたジャックは、アメリカ軍の基地に向かって飛んでいる一機のドイツ軍機に気づき、撃墜しました。
ドイツ軍機はフランスの農家に突っ込み、パイロットは近くにいたフランス軍に助けられました。
撃墜した記念に、垂直尾翼に付けられたドイツ軍のマークを切り取っている、ジャック。
ジャックは近くに降り、収容されたパイロットを見るため、壊された農家に入りました。
農家に入って驚いている、ジャック。手には撃墜したドイツ軍機のマーク。
農家の中で見つけたのは、深い傷を負って横たわっているディビットの姿でした。
死んだと思っていたディビットは生きていて、ドイツ軍のすきを見て戦闘機を奪い、自分の基地に向かって飛んでいるところでした。
ディビットは
「お前は悪くない。お前が落としたのはドイツ軍の戦闘機だ。そうだろ」
と言って、亡くなりました。
それから2ヶ月後、第1次世界大戦は休戦となり、ジャックは英雄として故郷に帰りましたが、心には深い傷を負っていました。
そのジャックを慰めてくれたのが、隣のお転婆娘メリーでした。このことでジャックは、メリーがずっと彼に思いを寄せていたことに気が付くのでした。
流星号(初めに出てきたジャックの車)に乗って、流れ星を見ている二人
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