なぜ戦争が始まるのか 

映画からその訳を探ってみようby亀仙人2世

映画 「ブルーマックス」

time 2021/02/06

映画 「ブルーマックス」

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亀仙人2

映画 「ブルーマックス」

1966年       イギリス・アイルランド・アメリカ

第1次世界大戦最後の年1918年、庶民出身のブルーノ・スタッヘルはパイロットとして最高の栄誉てある『プール・ル・メリット勲章(ブルーマックス)』獲得を目指して、やみくもに敵機を撃墜していきます。

敵機を20機撃墜したことで、空の英雄として『ブルーマックス』を授与されますが、その後、彼を待っていたものは。

 

 

監督 ジョン・ギラーミン
脚本 デヴィッド・パーサル
ジャック・セドン
ジェラルド・ハンリー
原作 ジャック・D・ハンター
製作 クリスチャン・フェリー
製作総指揮 エルモ・ウィリアムズ
出演者 ジョージ・ペパード
ジェームズ・メイソン
ウルスラ・アンドレス

あらすじと解説

1916年、西部戦線ではヴェルダンの戦いやソンムの戦いなどで、機関銃や大砲はては毒ガスなどを使いで、お互い多くの敵兵を殺し、生き残った兵の数が多い方が勝ちという、消耗戦を繰り広げていました。

当時歩兵であったスタッヘルは、機関銃に追われ飛び込んだ塹壕の中から空を見上げると、2機の戦闘機が空中戦をしていました。

1918年スタッヘルはパイロットの資格を取り、新たな任地に向かっていました。パイロットは士官しかなれませんが、この当時士官になれるのは、貴族か大富豪の子息に限られていました。

スタッヘルの様な庶民がパイロットになるには、大きな武勲を立て、隊長などからの推薦が必要でした。

映画で、スタッヘルが胸に鉄十条を付けているのはこのためです。

大鉄十字勲章1914年章

出典 ウィキペディア

飛行隊の事務所で他の隊員に紹介された時、スタッヘルが周りの隊員全員が貴族の出であることに引け目を感じていると見たハイデマン隊長は、スタッヘルを事務所に呼び入れ、

「君も少尉で将校の一人だ。引け目を感じることはない。早く隊になじめ」

と言って励まします。

翌日スタッヘルの初出陣で、隊員のファビアンと共に飛び立ちます。

目標は敵の観測気球です。彼の搭乗機は前日隊長から聞かされたファルツでした。これは飛行学校で訓練に使われた旧式の飛行機です。

 

ファルツ D.III

初飛行は1917年6月で、頑丈で安定性の良いのが特徴です。安定性がよい反面、空中戦では素早い動きが出来ず、不利になってしまいます。その場合は、頑丈さゆえの急降下速度の速さを利用して離脱でき、撃墜されにくい面もあります。

この映画のように、気球や動きの鈍い爆撃機や偵察機などには強みを発揮します。

最高速度 165㌔

武装: lMG 08/15シュパンダウ 7.92 mm機銃 ×2

出典(写真も)ウィキペディア

気球を破壊した後、イギリス戦闘機に追われ、同僚のファビアンは撃墜されてしまいました。

スタッヘルは地面すれすれに飛び、木立を利用して敵機の後ろにつき、撃墜しました。

この映画に出てくるイギリスの戦闘機はRAF S.E.5です。RAFとは、 ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー(The Royal Aircraft Factory ) の略です。

ロイヤルエアクラフトファクトリーSE5

ソッピース キャメルと共に第1次世界大戦でイギリスを代表する戦闘機です。

大きな上反角(翼が上に反り返ってる角度。これがあると安定性が増します)と、V8のHispano-Suiza8150馬力のエンジンで当時の戦闘機で1番速い222㌔の速度を出せます。また、上昇限度も5200メートと高いので、上空で待機して敵を発見したら急降下で攻撃し、素早く逃げる一撃離脱戦法を得意としています。

武装はエンジン横に、プロペラ同調式の7.7㎜ビッカース機関銃、上翼中央に、フォスター銃架に取り付けられた7.7㎜ルイス機関銃を装備しています。

フォスター銃架に取り付けられた、ルイス機関銃。

本来は機関銃の弾丸が入ったマガジンを取り換えるためのものですが、写真のようにして使うと敵機の死角である下にもぐって、上にいる敵を撃つことが出来ます。

出典(写真も) Wikipedia 

初めて敵機を撃墜したスタッヘルでしたが、撃墜された敵機を目撃した者がいないため、撃墜は無効となってしまいました。

第1次世界大戦で撃墜として認められる条件は、国によって違います。

主に撃墜の記録はパイロット自身の自己申告によるが、基本的に空中戦の世界では誤認が大変多く、実際の敵機撃墜数の何倍もの数を「撃墜した」と報告してしまうことは珍しくなかった。そのため、僚機や地上の目撃者の証言、被撃墜敵機の残骸確認・捕虜の尋問、敵軍の通信傍受・暗号解読、ガンカメラの記録に基づき検証されることも多い。なお「撃墜」のほかに、敵機の墜落・空中分解・炎上などは見届けなかったが確実に撃墜に至る損害を与えたとされる「未確認撃墜」、友軍機とともに協同して敵機を撃墜した「協同撃墜」、撃墜までは至らなかったが敵機に被害(被弾)を与えたという「撃破」などが存在し、これらも戦果となった(個人撃墜機数のカウント)。

ドイツの場合は、敵機が破壊(destroy)されたか、ドイツの勢力圏内に不時着させられ敵機の乗員が捕虜となる必要があった。敵機を撃墜し不時着してもそれが敵勢力圏内で救助された場合はスコアとして認められなかった。
複数機で1機を協同撃墜した場合もそのなかの一人だけが個人撃墜機数スコアに加えることを認められ、それはエースだけが、エース同士の場合ならばより多数機撃墜スコアの上位エースだけが、その1機撃墜を自分のものとしてスコアに加えていた傾向が強かった。

引用 ウィキペディア

そこで彼は、オートバイで夜まで探し回りましたが、結局破壊された機体は見つかりませんでした。

隊に帰った彼は、同僚が死んだことより自分の手柄を優先したとして、皆から冷たい視線を浴びてしまいます。

激しい塹壕戦で次々と死んでいく仲間を放置して(死んだ仲間を取りに行くと、今度は自分が撃たれてしまいます)生きてきたスタッヘルにとって、酒を飲みながら友の死を悼む習慣など、ありませんでした。

しかし、それは騎士道精神に則って戦う他の隊員には理解されず、蔑まれてしまいます。

そのため次の出撃で彼とチームを組もうとするものがなく、隊のエースであるウィリー・クルーガーマンと組むことになりました。

ウィリーは、ブルーマックス勲章のため、一機でも多くの撃墜を求めるスタッヘルに惹かれたのでしょう。

 

その後、ウィリーと飛んでいたスタッヘルは、イギリス軍の偵察機を見つけました。ウィリーは攻撃をスタッヘルに譲り、スタッヘルは後部銃座の偵察員に大けがを負わせ、無防備になった偵察機にドイツ軍の基地へ向かうよう指示します。

スタッヘルが敵機を基地に連れ帰ったので、多くの見物人が集まりました。その人々の前でスタッヘルは着陸寸前のイギリス機を撃ち、撃墜してしまいます。

これを見ていた人達は、先日撃墜したのに未確認になった腹いせに、大勢の目の前で無防備の飛行機を落としたのだと思いました。

実は偵察機が着陸する直前、後部銃座の乗員が動いて機関銃に手をかけたのを見たスタッヘルガ反射的に撃ったのでした。彼と一緒に飛んでいたウィリーも、後部座席の乗員が動いたと証言しましたが、ハイデマン隊長を始め誰も信じようとしませんでした。

 

この事件は、20機の撃墜を果たした甥のウィ―リーに、ブルー・マックス勲章を授与するために訪れた、クルーガーマン将軍の注意を引きました。

将軍は貴族階級主体の航空隊の中で、庶民の出ながらしゃにむに勝利に向かって行くスタッヘルを、戦意向上のヒーローに仕立て上げようと、決めました。その晩からドイツ軍による大規模な春季攻勢が始まり、みんなは外に出て遠くに光る砲火を見ていました。その間、将軍の妻であるカエティは、夫の甥ウィリーと不倫な関係を続けていました。

ドイツ軍の春季攻勢の解説はこちら ↓

1918年 ドイツの春季攻勢 ロシアとの講和が成立し、連合国軍に対してドイツが初めて人的優位に立ちました。

激しい戦争の中で、スタッヘルは次々と撃墜数を上げていきます。

戦いの中でスタッヘルは、ドイツの赤いリヒトフォーヘンが2機の敵機に追われているのを見つけ、一機を撃破して三翼機を助けましたが、自分は残りの敵機に撃たれ墜落してしまいました。しかし不時着に成功し、腕の負傷だけで助かりました。

ドイツの歩兵部隊で手当てを受け基地に帰ると、彼に助けられたドイツの撃墜王リヒトフォーヘン(レッド・バロン)が待っていました。

リヒトフォーヘンは助けられたお礼に、自分の部隊に加わり開発中の単葉機に乗るように、スタッヘルを誘いました。しかしスタッヘルは、この部隊で腕を試したいと言って、この誘いを断ってしまいました。リヒトフォーヘンは撃墜された戦闘機の代わりに、ベテランの飛行士しか乗ることを許されない三翼機を、2機送ってきました。

この話を聞いたクルーガーマン将軍は、空の英雄リヒトフォーヘンを救った庶民出の若きエースパイロットを宣伝に使おうと、ベルリンに呼び寄せます。その晩、将軍の妻カエティ伯爵夫人主催の晩餐会の後、カエティ夫人と関係を持ってしまいます。

 

戦線は、訓練を重ねてきたアメリカ軍が続々と戦場に加わり、ドイツ軍は一挙の苦境に立たされてしまいます。

連合軍の大反撃(100日攻勢)の解説はこちら ↓

 

1918年 百日攻勢(前編) 第2次マルヌ会戦で勝利した連合軍は、ドイツ軍に対して反撃を開始します。

1918年 百日攻勢(後編) ヒンデンブルク線を越えて休戦まで

新しく送られた来たフォッカー三翼機は、撃墜数1位のウィリーと2位のスタッヘルが乗ることになりました。

三翼機を受け取った二人は、偵察機の護衛に就きました。5機の敵と遭遇し、空中戦になりしたが、スタッヘルの機銃は弾詰まりを起こし撃てなくなりました。ウィリーは一人で5機の敵と戦いスタッヘルを助けます。

戦いの後、ウィリーは橋の下を潜り抜けるようスタッヘルを挑発ます。スタッヘルは無事通過しましたが、ウィリーは潜り抜けた後、そばにあった石塔に接触して墜落死してしまいました。

復元された飛行機で、端の下を飛んだ飛行士もすごいと思いますが、その飛行機を追ってぎりぎりまでは橋に近づてい撮ったカメラマンもすごいと思いました。

スタッヘルは、ウィリーが撃墜した2機を自分の手柄にしてまいます。

ウィリーの葬儀には、クルーガーマン将軍とその妻カエティも主席しました。その夜、カエティ夫人と密会したスタッヘルは、ウィリーは操縦の腕を競いあって死んだことや、ウイリーの落とした2機の撃墜を自分のものにしたことを話してしまいました。カエティ夫人は二人は自分を奪い合って死んだと、勘違いしてしまいます。

戦局はますます悪化し、ベテランのパイロットが不足したため、訓練途中の飛行学校の生徒までも駆り出されるようになりました。そんな中、退却するドイツ軍を助けるため、敵の地上軍を攻撃することとなります。ハイデマン隊長は新米の飛行士を守るため、空中戦を禁止しました。

地上戦の帰り、スタッヘルは敵の編隊を見つけ命令を無視して向かって行き、他の退位もそれに続きました。結果、スタッヘルは7機のうち3機撃墜してブルーマックス勲章の資格を得ましたが、隊の半数を失ってしまいます。怒ったハイデマン隊長は、スタッヘルに対して命令違反で軍法会議の手続きを取りました。

ハイデマン隊長と、スタッヘルはベルリンに呼ばれました。ベルリンで、ハイデマン隊長はクルーガーマン将軍から、明日スタッヘルにブルーマックス勲章の授与式が行われることを聞かされ、ハイデマンは報告書の撤回するよう求められました。

夜になって、ホテルで待機しているスタッヘルの元へ、カエティ伯爵夫人が尋ねてきました。夫人は「ドイツはもう負けるから、一緒にスイスへ逃げよう」と誘いましたが、スタッヘルは断ってしまいます。

カエティ夫人は「私を奪うために、ウィリーと勝負したのでしょう」と聞くと、スタッヘルは「それはお互い操縦の腕を競い合っただけで、あなたとは関係ない。それにあなたのペットとして暮らすのはごめんだ」と答えます。怒ったカエティ夫人は、激怒して部屋から出ていきました。

翌日授賞式が行われ、スタッヘルは臨席した皇太子から直に勲章を授けられました。式典の最中、本部から電話があり式典を中止するよう元帥からの命令を伝えてきました。将軍はスタッヘルを監禁して、代わりにハイデマン隊長に新型機の展示飛行を命じました。

ハイデマンの飛行中元帥から直接電話があって、スタッヘルの手柄のうち2機がウィリーのものから奪ったとの通報があったためだそうです。通報者の身元を聞いた将軍は、妻のカエティの方を振り向きました。

カエティは「成り上がり者が、私を侮辱したから」と、答えます。

そこにハイデマン隊長が、飛行を終えて戻ってきました。ハイデマンは「あの飛行機は危険です。翼を支える支柱が脆く、生還できたのが奇跡です。」と報告しました。

クルーガーマン将軍は電話をとり、スタッヘルを呼びだし、

「新型機のテストは済んだ。観衆の前で君の飛行術を披露してくれ」

と命じました。

スタッヘルは喜び勇んで新型機に乗り、大勢の観客の前で宙返りや錐もみ飛行をした後、急降下のために上空はるかに飛び立ちます。

やがて上空で大きな音がして、飛行機の落下する音が近づいてきました。

その音を聞きながらクルーガーマン将軍はスタッヘルの書類に「受勲後、展示飛行中に事故により死亡」と書き、元帥に届けるよう命じました。

 

この映画を見終わって、最初に浮かんだのが、『一将功成りて万骨枯る(いっしょうこうなりてばんこつかる)』の言葉でした。

スタッヘルは死んだことにより、撃墜数を誤魔化したことによる弾劾裁判と命令違反の軍事裁判を免れ、ブルーマックス勲章の価値と、クルーガーマン将軍をはじめとする将校団の名誉が守られることになりました。今でも大会社の社長や政治家たちが、自分の身を守るために部下や秘書官を犠牲にしています。

 

 

 

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