なぜ戦争が始まるのか 

映画からその訳を探ってみようby亀仙人2世

ドラマ『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.3。なぜ、9.11を防げなかったのか。 

time 2021/10/20

ドラマ『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.3。なぜ、9.11を防げなかったのか。 

CIA主導で爆撃を行ったアメリカですが、科学兵器を作っているとされたスーダンの工場が、実はスーダンでも有数の製薬工場であり、ここが破壊されたことでスーダン国内でマラリアの治療薬が一挙に不足してしまいました。さらにこの誤爆で1人が亡くなり、11人が負傷したことから、アメリカを非難する声が上がり、アルカイダに対する方針を変更しざるを得なくなります。

アイキャチ画像の人物は、当時CIAアレックス支局のチーフだったマイケル・シューアで、CIA「アレック支局」局長マーティン・シュミットのモデルとなった人です。画像はYou Tubeの動画から持ってきました。

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亀仙人2

『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.3(DVD3枚目)

エピソード4”水銀”

題名の”水銀”はドラマの中で言っているように、アルカイダが「ターミネーター2」に出てくる「液体金属」で出来ているサイボーグをさしています。このサイボーグは、いくら破壊しても何度でも蘇ってきます。

エピ―ソード3で生き残った少年は、長い距離を歩き別の場所にあるアルカイダの訓練キャンプに着きましたるこの場所は前のキャンプと違い、純粋に軍事訓練を目的としたキャンプで、家族や子供の姿はありません。

2004年に行われた9.11合同調査委員会でスーファンが証言した通り、FBIは大使館爆破犯人の一人ムハンマド・オワリを取り調べて得た電話番号をCIAに伝え、CIAはその電話の持ち主アフマド・ハッダの盗聴と監視を続けました。しかし、CIAのアレック局はそこから得た情報を独占し、内部機密としてFBIにその内容を渡しませんでした。

アフマド・ハッダの元には多くの人々が尋ねてきていました。その中には9.11でハイジャック機に乗っていた者(後でミダルと分かります)も含まれています。

また彼の元にはアフガニスタン、パキスタン、マレーシアなどの各地から、電話が集中してきていました。そして通話の中で何度も出てきた「キーマ(アラビア語 山頂)」が何を指しているか、分かりませんでした。

1999年2月、CIAはUAE(アラブ首長国連邦)の要人たちがアフガニスタン南部の砂漠で大規模な狩猟キャンプ(シェイクアリキャンプ)を設営しました。ビンラディンはその近くに滞在して、UAEの狩猟キャンプに訪れるという情報を得ました。

CIAのシュミットは、国家安全保障会議で、このキャンプ地の爆撃を提案しました。

しかし、砂漠の真ん中に作られ一般の人の被害が少ないと言えども、そこに居るのはUAEの王子や政府の閣僚、財界の大物たちであり、ビンラディンを殺すためにミサイルを撃ち込めば、これらの人たちも犠牲になってしまいます。

FBIのオニールが反対した通り、ビンラディン一人を殺しても事態は変わらず、かえって現地の人たちの反米感情を煽り、アルカイダの構成員を増やす結果になるのに違いありません。

この問題の底は、原油利権をめぐってアメリカが取り続けてきたアラブ政策があり、その犠牲になった人たちの憎しみがアメリカに対する反発を産み、たとえわずかでもアメリカを攻撃している、ビンラディン率いるアルカイダを支持し、応援することになってしまったのです。

ですからビンラディン一人を殺し、アルカイダを力でねじ伏せても、アメリカの外交姿勢を変えなくては、解決できる問題ではありません。

国家安全保障会議のクラークにに拒否されたシュミットは、直接CIA長官のテネットに、この話を持って行きました。

CIA長官もやはりこの話を断りましたが、それより周りの犠牲を気にせず、何が何でもビンラディンを殺そうとするシュミットの考え方に危険を感じていました。

CIA「アレックス支局」に戻ったシュミットは、監視を続け居たアフマド・ハッダが首脳部とメンバーを繋ぐ中継点の役をしており、意味の分からなかった「キーマ(山頂)」がマレーシアで首脳(サミット、山頂)会議が開かれることを意味しているのを、突き止めました。

ここから、有線電話や通信衛星を使って国際展和だけでなく携帯電話、インターネット、各種無線通信、海底ケーブルなど、ありとあらゆる通信網を傍受しているNSA(国家安全保障局)が加わり、「キーマ、サミット」の語を含む通信の監視が始まりました。

2000年1月には,JI「ジェマー・イスラミア」メンバーのヤジド・スファアトの自宅(クアラルンプール)において,米国同時多発テロ事件(2001年9月)実行犯2人を含む「アルカイダ」メンバーによる同テロ事件の謀議が行われた。

引用 公安調査庁 

しかし、シュミットの言動に危険を感じたCIAは彼を「アレックス支局」から外し、図書室勤務に移動させました。

シュミットの後「アレックス支局」を任されたダイアン・マーシュは図書室に通い、事態の進捗状況をシュミットに伝えていました。

アルカイダのキャンプには大勢の志願者がやって来ましたが、その中に二人のサウジアラビア人が居ました。

サウジアラビアはアメリカの友好国であるため、アメリカに入国するのが容易であり、この二人は「選ばれし者」となります。

エピソード5 ”Y2K”

“Y2K”とはコンピューターの「2000年問題」と言われているもので、古くからのコンピーターでは「年」を表すのに下の二けたの数字だけを使っていました。つまり「1986年」は「86年」としていたのです。ですから「2000年」は「00年」となり、これをコンピーター内部では「1900年」として認識してしまいます。

この為「2000年」になると、コンピーターが誤動作を起こし、システムに障害が出るのではないかと、思われていました。

さらにこの混乱を利用して、ウサマ・ビンラディンが何らかの攻撃を仕掛けてくる恐れもありました。

1999年12月27日、ワシントン州ポート・エンジェルスの国境検問所で、カナダからフェリーでやってきた車を調べている最中、一人の男が検査待ちの車から逃げ出しました。

男を捕らえ、車を調べてみるとトランクから大量の爆発物が見つかりました。男の名は、アフメド・レザム通称アブー・レダでベニ・アントニ・ノリス名義のカナダ人偽造パスポートを持っていました。彼は2000年1月1日、ロスアンジェルス国際空港で爆破テロを行う予定でした。

この知らせを受けたアメリカ国家安全保障会議のクラークは、中東各国のアメリカ大使館に厳重警戒に入るよう指示しました。またアメリカ国内にも、潜入したテロリストを支援する、アルカイダの組織があることが分かりました。

レザムの車から発見された電話番号の局番がニューヨークであったことから、FBIニューヨーク支局にも知らせが入り、その番号がブルックリンに住むアプドゥル・ガニ・メスキニと分かりました。

捕らえられていたアルカイダのメンバーの話によると、メスキニはブルックリンで顔が広く、会計係として信者からアルカイダへの寄付金を集めていたそうです。

FBIはさっそくメスキニの家に監視カメラを設置して、捜査官のボビーとスーファンに命じて24時間監視することにしました。

 

9.11同時多発テロを防げなかった理由 その3

テロリストの入国と、アメリカ国内のテロリスト拠点に対する無警戒

アフメド・レザムがカナダとアメリカの国境で捕まったのは、1999年12月14日のことでした。レザムはアメリカ入国後シアトルでメスキニと合流して、一緒にロスアンジェルス国際空港に下見に行く予定でした。

この事件は、爆弾を用意したカナダとメスキニの居るアメリカ両国の国内にテロリストを支援する組織があることを示していました。

しかしFBIは、1月1日に行われるテロを未然に防ぐことが出来たことで、追跡することを止めてしまい、アメリカ国内にあるテロ組織とその資金源を暴くことをしませんでした。

アフメド・レザムが捕まったのは、彼が落ち着かない様子に気が付いた税関の女性職員が近づくと、レザムが急に逃げ出したことがきっかけでした。

 

この間オニールはワシントンDCのユニオン駅の遺失物取扱所に行き、失くした電子手帳を受け取りました。これが後で問題となります。

 

CIAではNSA(国家安全保障局)の盗聴によって、アフマド・ハッダの義理の息子ミダルがドバイからクアラルンプール(アルカイダ、サミットの行われる場所)に行くとの知らせが届きます。さらにそのあとの行き先に関して、ドバイの捜査官が、ホテルでミダルの部屋を調べたところ、アメリカ合衆国のビザを携行していることが分かりました。

CIAはマレーシアの特殊公安部に連絡して、ミダルの監視を続けます。

クアラルンプールに着いたミダルは、先のアルカイダのキャンプに出会ったハズミと再会しました。二人の泊まったホテルには片足の男ハラドもいました。ハラドは新しい義足をマレーシアの医者に頼み、同じホテルに滞在していたそうです。

ハラドはエピソード1でナイロビにあるアメリカ大使館の周囲を撮影し、エピソード3で旅客機によるアメリカ本土攻撃を提案していた人物です。この3人がホテルで会談している様子は、CIAがしっかりと撮影していました。

その後、ミダルとハズミはアメリカに入国し、サウジアラビア領事館に勤務している男と接触しました。

またミダルは子供を産んだばかりの妻に、ほぼ毎日電話をしていたことから、NSA(国家安全保障局)は2000年1月15日、ミダルがアメリカに入国したことを知りました。この情報はアメリカ国家安全保障会議のクラークに知らされます。

ミダルがアメリカのビザを持って、ドバイからクアラルンプールに向かったとの公電がCIAに届いたとき、CIAのアレックス支局に連絡係として出張していたFBIのヴィンス・ステュアートは、この公電をCIA職員53人が読んでいるのにもかかわらず、FBIに知らせないのに腹を立て、オニールに知らせようとしました。ところが、知らせないのは何か理由があるのだろうとして、同僚のトニー・アンに止められてしまいました。

2004年に行われた9.11同時多発テロ調査委員会の公聴会で、CIA長官テネットは、この公電は誰も読んでいなかったのでFBIに知らせようがなかった、と嘘の証言をしていました。

またアメリカ国家安全保障会議のクラークは、CIAの局員のうち少なくとも、50~60人がこの公電を読んでいたと、証言しています。しかし、彼もこのことをFBIのオニールに知らせませんでした。??

 

9.11同時多発テロを防げなかった理由 その4

ミダルのアメリカ入国を阻止できなかった。

ミダルがアルカイダのメンバーでありことを知りながら、アメリカのパスポートとビザを収得していたことを、関係機関(FBIや入国管理局)に知らせていませんでした。このため空港の入国管理局は、アルカイダでテロリストのミダルの入国を許してしまいました。ハズミに関しては、3月になってミダルと同じ飛行機でアメリカに入国したことが分かりました。

この時点で、ミダルを追跡捜査することが出来ていれば、アメリカ国内で彼らアルカイダを支援する組織を、見つけることが出来たはずです。

2000年の5月から6月にかけて、パイロット役のテロリストたちが相次いでアメリカに到着します(大型ジェット機の操縦免許を収得するには1年程かかるため)。

翌20001年の春から初夏にかけて、残りの腕力ハイジャッカー(操縦士の殺害や機内の鎮圧を行う役目)20名近くが相次いで入国し、支援組織の下で暮らしていました。

 

同じころサウジアラビアの駐米大使がCIAのテネット長官の所に尋ねて来て、

「あなたと私の懸案事項は、祖父が常々言っていた”汚い物とは距離を置け”との言葉通り、対処は済みました。」

と告げ、お土産にサウジ産のイチジクを渡しました。

 

1999年12月30日は金曜日で、イスラム教徒はモスクに行って礼拝をしなければいけない日です。

スーファンはモスクに出かけるメスキニの後をつけ、信者から寄付を集めていのところを目撃しました。

その夜FBIのオニールは用心のため、メスキニの関係者一同の逮捕を命じました。1999年の大みそか、捜査員全員で街頭に出てテロ事件の監視に当たりましたが、何事もなく2000年の年明けを迎えることが出来ました。

各DVDの内容と解説のリンク下に張っておきます。

DVD1枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.1

エピソード1”始まり”

製作スタッフによる、エピソード1の解説

DVD2枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.2

エピソード2”我が宗教の喪失”

エピソード3”犯された過ち”

DVD3枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.3

エピソード4”水銀”

エピソード5”2000年問題”

DVD4枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.4

エピソード6”戦場の少年”

エピソード7 “将軍”

DVD5枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.⒌

エピソード8 “特別な関係”

エピソード9 “火曜日”

DVD6枚目 『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』Vol.6

エピソード10 “9.11”

スタッフによる最終回の解説

 

 

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